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森林研究所たより 林縁でブナ苗を育てる(林業にいがた2007年8月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0058559 更新日:2019年3月29日更新

1 はじめに

 2005年秋に新潟県内のブナが十年ぶりの大豊作となったことを受け、県種苗生産者による県内産ブナ苗木の安定供給にむけた取り組みが始まりました(林業にいがた2005年8月号、2006年9月号、2006年11月号)。県内の災害復旧現場で地元の種子から育成したブナ苗木が活用された事例も出てきたことから、新潟県はブナの地域性苗に取り組む先進地になりつつあります。今後、更なる地域性ブナ苗の活用が望まれますが、現在育苗中の苗木は、来年春には出荷適正サイズの苗高50cmを超えてしまいます。次の豊作までの数年間、ちょうど良い大きさの苗木として維持するにはどうしたら良いのでしょうか。

2 ブナの性質と林縁環境

 ブナは、林床の比較的暗い環境でも数年は生き延びることができる性質(耐陰性)があります。そのために、毎年種子がならなくても、次ぎの豊作で新たな実生が補充されるまでの間、林床で待機して更新のチャンスに備えることができます。これを実生バンクといい、ブナの天然更新の特性として知られています。
 豊作後数年が経過したブナ林を観察すると、完全な日向よりも林縁で比較的多くの待機している稚樹を見ることができます。林縁は林内に向かうほど次第に暗くなるため、生存にちょうどよい明るさの場所を利用しているようです。

3 林縁環境を利用した管理方法

 このようなブナの高い耐陰性と林縁環境を利用することで、苗木を一定の大きさを保つことができるのではないでしょうか。新潟大学紙谷研究室の山田いずみさんは、卒業論文でこの研究に取り組み、林縁の光環境を詳しく調べ、

  1. 林縁からの距離により生育するブナ稚樹の最大苗高を求めることができること
  2. 稚樹の形質(根、幹、枝、葉の割合)は林縁の光環境では大きく異ならないこと

を明らかにしました。大学院進学後の現在もいろいろな方位の林縁でも検証すべく、県種苗協田沢支部の協力で研究を継続中です。この成果を応用することで、近隣のスギ林などの林縁を活用し、出荷に適した苗高(たとえば50cm)の維持、豊作前のブナ林縁環境整備による山引き用苗のストックなど、種子に代わる新しい苗木資源管理の可能性が期待できます。

調査風景の画像
調査風景

4 終わりに

 森林研究所構内のスギ林縁でも、この方法を応用し、ブナ稚樹をポットで育成しています。林外よりも林内では雑草も少なく、水切れもしにくいため管理は比較的楽なようです。広い畑がいらないので個人や小規模な団体などにもお勧めです。興味のある方は是非おためし下さい。

林縁のブナ稚樹の画像
林縁のブナ稚樹

森林・林業技術課 塚原雅美

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