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森林研究所たより 新潟県南部の雪質について(林業にいがた2006年2月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0058565 更新日:2019年3月29日更新

 雪は天からの手紙である

 これは、世界的に有名な雪の研究者である中谷宇吉郎博士の言葉で、地上に降ってくる雪の結晶を見れば、雪ができた上空の気象の状態がわかるという意味です。中谷博士は、人工的に雪を作ることに成功し、雪の結晶の形は温度と湿度によって決まることを発見したのです。しかし、降ってくる雪を観察すると、完全な形の結晶が降ってくることはまれで、結晶が壊れたものや、たくさんの結晶がくっつきあったものが多いのが実際です。

 それでは、地上に降り積もった雪はその後どうなるのでしょうか。積もったばかりの新雪は非常に軽いのですが、積もっていくにしたがい、自重で圧縮されます。そして、密度が大きくなると同時に雪同士が結合して、しまり雪になります。さらに、気温が高い状態になると雪が融け、ざらめ雪へと変わります。このように、新潟県では普通、新雪→しまり雪→ざらめ雪へと雪質が変化します。

 このような雪質の変化は地域によって異なり、これまでの全国的な融雪初期の積雪断面の観察から、新潟県より北ではしまり雪が多く、反対に新潟県より南ではざらめ雪が多く、新潟県はその中間地帯であることがわかっていました。そこで、新潟県南部において雪質の地域差を検討しました。

雪質は場所によって異なる

 図1は、1993年から2003年までの11年間における、湯沢町の三調査地の2月下旬から3月上旬の積雪断面に占めるざらめ雪の比率を示したものです。調査地ごとに見ると、積雪が多くなるとざらめ雪率が低くなっていることがわかります。これは、積雪が多い年ほど1回の降雪量が多いため、変態が起きにくいことが考えられます。また、浅貝と三俣、湯沢を比較すると、同じ積雪200cm以下でも、ざらめ雪率が大きく異なることがわかります。

 そこで、根雪初日から調査日までの調査地点の平均気温とざらめ雪率との関係を図2に示しました。すると、浅貝ではいずれの年もマイナス2度以下であることがわかります。浅貝は標高1,000mと高いことから、冬期の気温が低く、積雪の変態が起きにくいことが予想されます。

 このように、新潟県南部という限られた地域においても雪質は積雪深や冬期の気温によって差が認められることがわかり、標高300m以下はざらめ雪地帯、標高650m以上がしまり雪地帯、標高300~650mは中間地帯と区分されました。

 しまり雪とざらめ雪を比較すると、ざらめ雪の方が移動圧が大きいことがわかっています。積雪は最後にはざらめ雪となって消雪しますが、ざらめ雪地帯では根雪当初から積雪断面に占めるざらめ雪が多いため、冬期間中、積雪の移動が起きています。したがって、ざらめ雪地帯の傾斜25度以上の斜面で造林する場合は、間伐材を活用したピラミッド杭を施工するなどして、積雪の移動を軽減する必要があるでしょう。

積雪深さとざらめ雪率との関係の画像
図1 積雪深さとざらめ雪率との関係

平均気温とざらめ雪率との関係の画像
図2 平均気温とざらめ雪率との関係

森林・林業技術課 武田 宏

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