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【上越労働相談所】こんなとき、どうする?労働相談Q&A No.14
No.14「高年齢者の雇用に関して注意すべきことは?」
Q 当社では多くの高年齢者を雇用しており、間もなく定年を迎える従業員も出てくるのですが、どのような点に気を付けて雇用管理を行えばよいでしょうか。
A 高年齢者(55歳以上の方)の雇用については、高年齢者雇用安定法において65歳までの高年齢者雇用確保措置の実施が義務づけられており、その代表である継続雇用制度について正しく理解することが重要です。
また、令和3年4月1日からは、70歳までの高年齢者の就業機会の確保が努力義務となりました。
以下のポイントを確認してみましょう!
Point1 65歳までの雇用確保措置(義務)
事業主の講ずるべき雇用確保措置
現在の法制度では、60歳を下回る定年の定めは認められず(高年齢者雇用安定法第8条)、なかでも65歳未満の定年の定めをしている場合は、高年齢者雇用確保措置として、以下のいずれかの措置を講じなければなりません(同第9条)。
- 65歳までの定年の引き上げ
- 65歳までの継続雇用制度の導入
- 定年の定めの廃止
継続雇用制度について
継続雇用制度とは、現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度です。前述の雇用確保措置のうち、8割を超える事業主がこの継続雇用制度を採用しており、代表的な雇用確保措置であると言えます。
従来は、労使協定により継続雇用制度の対象者を限定することができましたが、平成25年4月1日から改正高年齢者雇用安定法が施行され、この仕組みが廃止されたため、継続雇用制度は希望者全員を対象としなければなりません。
ただし、改正法施行より前に労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた事業主については、経過措置として、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上の年齢の者について継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることが認められています。
2019年4月1日から2022年3月31日まで | 63歳 |
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2022年4月1日から2025年3月31日まで | 64歳 |
また、継続雇用後の労働条件については、高年齢者の安定した雇用を確保するという高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえたものであれば、最低賃金などの雇用に関するルールの範囲内で、フルタイム、パートタイムなどの労働時間、賃金、待遇などに関して、事業主と労働者の間で決めることができます。
なお、継続雇用後に1年更新の有期雇用契約へ変更する場合、法の趣旨に鑑みれば、年齢のみを理由として65歳前に雇用を終了させるような制度は適当でなく、65歳までは原則として契約が更新されることが必要となります。
Point2 70歳までの就業機会の確保措置(努力義務)
65歳までの雇用確保(義務)に加え、令和3年4月1日から、65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置として、以下のいずれかの措置を講ずる努力義務が課せられました。この就業確保措置には、雇用によらない就業機会の確保措置も含まれます。
<雇用による措置>
1. 70歳までの定年引上げ
2. 定年制の廃止
3. 70歳までの継続雇用制度の導入
<雇用以外による措置(創業者支援等装置)>
4. 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
5. 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
- 上記5つの高年齢者就業確保措置のうち、いずれの措置を講ずるかは労使間で十分に協議を行って決めることが望ましいとされています。講ずる措置はひとつでも複数でも可能です(創業者支援等措置(上記4及び5)のみを講ずる場合は、過半数労働組合等(※)の同意が必要です。)。
- 70歳までの高年齢者就業確保措置は努力義務なので、対象者を限定する基準を設けることは可能ですが、過半数労働組合等(※)の同意を得ることが望ましく、また、その場合でも、事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど、法の趣旨や、他の労働関係法令等に反するものは認められません。
※過半数労働組合等
労働者の過半数を代表する労働組合がある場合にはその労働組合、過半数労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を指します。
〈過半数代表者選出の留意点〉
- 労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者でない者。
- 創業者支援措置導入への同意、就業確保措置の対象者を限定する基準に関する同意を行うことを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きで選出された者であって、事業主の意向に基づき選出された者でないこと。
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