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第2回  地域おこし協力隊と地域住民インタビュー(渋谷春菜さん/佐渡市地域おこし協力隊)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0120547 更新日:2019年6月29日更新

 新潟県内で活動する地域おこし協力隊の活動地域を訪れ、協力隊員の活動の様子や地域への思いに焦点を当て、インタビューを通じて紹介することにより「地域おこし協力隊って何?」を知っていただくコーナーです。
 また、このインタビューでは、協力隊員をサポートする地域住民の皆さんにもスポットを当て、協力隊員への思い等についても併せて紹介します。

 第2回は、佐渡市地域おこし協力隊の渋谷 春菜(しぶや はるな)さんに注目し、インタビューを行いました。

渋谷春菜さん(佐渡市地域おこし協力隊・2年目)の画像
渋谷春菜さん(佐渡市地域おこし協力隊・2年目)

 渋谷さんは、上越市柿崎区出身で、新潟市に住み、大学に通っていた学生時代。その当時、渋谷さんが将来なりたかったのは、教員であったという。
 大学のゼミの活動で佐渡に来たことが、佐渡との出会いだった。ゼミの活動では、地域のお祭りを手伝い、そこでの経験がゆくゆくは地域おこし協力隊への道へつながっていくのだった。

地域おこし協力隊になったきっかけは、『地域教育』へのモヤモヤ感

お祭り
お祭りに参加した時の写真

〇:インタビュアー(地域政策課武田) ●:渋谷さん

〇渋谷さんが協力隊になったきっかけって何だったのでしょうか。
●大学3年生の時に入ったゼミの活動で、佐渡の集落のお祭りのお手伝いをするというのがあって、私は10日くらい豊岡という小さな集落に泊まって、鬼太鼓を習いながらお祭りのお手伝いをしていました。その時に佐渡はいいなあ、もっと関わりたいなあと思っていたときに、佐渡推しの先生が佐渡市の協力隊募集の案内を見つけてきて紹介してくれたのがきっかけです。
 私はもともと、特別支援の教員を目指して学科のゼミにも所属していたんですが、もう1つゼミに参加していたんですよ。それは、森下先生という音楽科の先生のゼミだったのですが、音楽の授業後に先生と雑談しているときに、佐渡で実習やっているんだという話を聞いて。実習に来る?と言われたので、ゼミ生ではなかったのですが、「お祭り面白そうだな」という気軽な気持ちで参加しましたね。

●佐渡に行った選択とか、佐渡で学んだことで、10日間でも自分が変わったな、成長したな、と思ったことが多くて印象深かったというのと、それと、もともと、ずっと教員志望だったんですが、ちょうど大学3年生くらいから、「まだまだ社会のことも知らないし、すぐに教員になるのってどうなのかな」「自分がまだ成長しきっていないのに、学校の先生になるのってどうなのかな」「もうちょっと社会や自分のことを知りたいな」と思う中で就職を考えているときに、協力隊というものを知りました。
 そこで、佐渡という、自分を変えてくれた地に行けば、また何か新しい発見があるんじゃないかなという期待感もあって、協力隊になりました。

〇卒業後すぐ教員になるのに違和感を覚えたのは、佐渡に行った経験も影響していたんですか。
●それもあったかなと思います。佐渡で地域のおじさんたちとか色々な人と話して関わる中で、「世界って広いな、色んな人や色んな生き方があるんだ」と思いましたし、それと、大学で教育を学ぶ中で、「地域とつながる」とか「地域で教育する」とか、「地域」という言葉がよく使われているんですが、「じゃあ、地域って何だ?」と。何をすれば、地域とつながると言えるんだろうというのが明確にわからなくて。地域のおじいちゃん、おばあちゃんとしゃべれば「地域とつながった」と言えるんだろうかとか、自分はその方法を知らないし、地域とつながったこともないなあと思ったんですよね。地域の何が良いか、何が楽しいかを自分が知らないと、教えることなんてできないんじゃないかって。

●また、私は中学生から新津に住んでいたんですが、そこでは地域の活動に参加することも地域で遊んだ記憶もなくて、あまり地域に対する愛着もなかったんです。自分の住むまちのことを全然知らなくて…。「あそこに住んでいながら、地域での教育って、私は何を教えられるのだろう」というモヤモヤした思いを抱える中で、佐渡の10日間の実習で、地域のおじさんたちと囲炉裏を囲みながらしゃべったりしているときに、「あ、これを子供たちと一緒にやれたら楽しいな」と素直に思ったんですよね。これが地域での学びや、地域での交流の楽しさなんだなと。そして、「自分が」もっとこういうことをしたいなと思ってしまったんですよね。

〇来る前と比べて、地域に対して印象が変わったところはありますか。
●来る前は、佐渡は1つの島だと思って来たんですが、中に入ってみると、佐渡は1つの国なんだということに気づきました。地域性という意味で、人柄も違うし、文化も違えば言葉も違う。1つの島に、名古屋と奈良と大阪が共存しているような、それくらい地域によって違いがあるということです。赤泊の中だけでも、集落によって結構違いがあっておもしろいですね。それが、地域を知るということなんだなと実感しています。
 あとは、人々がとても芸達者だということにびっくりしました。できることが多すぎるんです。
 先日、民話の劇をやったんですが、舞台の絵も、衣装も、メイクも、演者も全部村の人でできてしまうんですよ。あと、カラオケ大会をやると言ったら、音響や照明、映像の撮影まで本格的に全部自分たちでやっているんです。みんな、趣味でやっている人たちばかりなんですが、ライトとかも自前のものを持ってきたり。
 「やりたい」という話をすれば、結構なんでもできてしまうことが多くて。そういうところがすごいと思います。
〇今の渋谷さんなら、地域教育というものをしっかり教えられるんじゃないかと感じます。
●(笑)。あんなに教育を語って言いにくいんですが…今は教員になりたいという気持ちがだんだん下がってきているんですけどね。

渋谷さんのミッション『若い人を盛り上げる』!?

〇渋谷さんの普段の活動について教えてください。
●集落行事に参加したり、あとは地域の情報発信としてブログ更新などを日ごろ行っています。
 1年目の後半からは、「若者主体のイベントづくり」が活動の中心になっています。イベントの裏方としての事務や企画運営の手伝いなどを行っています。
 その中では、釣り・自転車・コスプレのイベントが力を入れたものだと思います。

釣りイベント写真
釣りイベント

コスプレイベントの画像
コスプレイベント

〇これらのイベントを主体として行っている地域の若者は、いつも同じメンバーなんですか。
●核となるメンバーは、それぞれのイベントで3~6人くらいいて、イベントごとに違うメンバーです。その他、イベントによっては20人ほど当日スタッフとして赤泊の人以外にも島内外から集まってきています。
〇この1年で、赤泊は面白いイベントが立て続けに行われていたなと感じるんですが、これは地域の人からやってほしいと言われたのか、それとも、地元の若者の間で「やろう!」という機運が高まってきたからなんでしょうか。
●うーん、微妙ですね(笑)。どちらもあるかなあ。
 そもそも、私が協力隊として赤泊に来たときの地域からの1番の要望は、「若者主体の地域づくりを進めてほしい」ということだったんです。
 私を呼んでくれたのも、地域づくり協議会の「若者部会」が主体だったんですね。赤泊は、「若い人が集まる機会・組織がない」ということが課題でした。「もっと若手が広く集まれる場があった方が良い」という思いから、まずは若い人が集まるイベントをやってみないか、という地域の人からの提案があって、1年目は私がクリスマスパーティやバーベキュー大会の企画や運営を行いました。
 それらのイベントは、参加者も多く盛況ではあったのですが、もう1歩進んで、若い人たち自身が企画や運営をするような形のものがないとダメだよねという問題意識はありました。いつまでも、お客さん気分では継続性もないし、何より若い人同士の仲も深まらないんじゃないかと。
 そんなときに、その協議会とは別の集会(はすみ会。赤泊だけでなく佐渡南部地域の若手有志を中心とした集まり。)に参加した時に、イベントを地域の若い人たちで企画運営するのが良いんじゃないかという提案をもらってやることになりました。
 赤泊の若い人たちがこれから地域を作っていったり、これから次世代の若手たちが自分の会社や家業を切り盛りしていくのに自分たちで企画したり運営をする機会がないから、そうした経験を積ませたいという地元の商工会も思いも背景にありました。

 最初は、佐渡島内で人気のある娯楽なのに、大会などがなかった「釣り」と「自転車」に注目して、これらは大きなイベントはあるけれど、ふらっと来れるような、小規模なものをやりたいねというところを出発点に話を進めました。

自転車イベントの画像
自転車イベント

自転車イベントの画像
自転車イベント

〇赤泊の地域づくり協議会の若者部会は、若者を中心に構成していたのですか?
●実はそうではなく、地域づくり協議会は、60~70代がメインに構成されていて、その中の部会である若者部会も、そうした年代の方中心に構成されていました。そこに若手(40代の方2人+オブザーバー渋谷さん)の3人がいる、という状況でした。
 協議会の中心メンバーの皆さんにとっては、もう孫に近いくらいの年齢の人たちと何かしようと思っても、話も合わないし何をすればよいかもわからないので、私ともう1人の若手である40代の方に、「若手に年齢が近い人として、物事を動かしていってほしい」という要望を持っていたんです。
 そんな中、はすみ会という有志で集う会ができて、ここの目的は起業や森林資源の活用などが中心だったのですが、20~30代にイベントの自主企画などの経験ができるような組織があれば良いね、という話が出てきて。そこで生まれたのが、「赤泊にぎわい実行委員会」で、ここが事務局となって、いよいよ釣り・自転車・コスプレイベントを実行することになったんです。
 ただ、今度(4月)行うコスプレイベントが相川での実施になるので、それはまた新しい組織で実施する予定です。赤泊にぎわい実行委員会も活動する予定でいますが、1年やって、若干燃え尽きている感じもありますね(笑)。


組織変遷図
渋谷さんが図解してくれた、各組織の変遷

〇活動している中で、ツラかったことってありますか。
●やっぱり、地域の組織の変わり目の時は苦しんでいましたね。
 最初若者部会で、若手の自主企画をしたいねって話しつつも、定例のイベントだけやっていれば十分じゃないかという話でまとまって、後は若手(2人+渋谷さん)に任せられて、どうしよう ってなったときに、新たな組織(はすみ会)に呼んでもらって若手でイベント運営しようという話が出てきたり、そこでイベント運営しようとなったときに声を掛けた面々に集まってもらったり。
 私は、実は釣りも自転車もコスプレもどれもそんなにやったことがなくて。全く知識のない中、周りのみんなに「さあ、どうする」と投げかけながらやっていました。それでも、仲間たちが集まってくれて協力してくれて、すごく助けてもらいましたね。どうしようと思っているときに、うまく人とつながったり、一緒にやろうと言ってくれる人たちがいたおかげで乗り越えられたなと思います。

〇60代中心の若者部会では、最初は若者にもうちょっと活気あったほうがいいんじゃないかという思いがあったと思うんですが、渋谷さんに協力してくれている若い人たちって、元気あるし、支えてあげる力しっかりあるじゃないかと思ったんですが。
●若手の人たちは、みんな何でもできるし、元気なんです。だけど、赤泊の気質も相まって、みんな「言い出しっぺ」にならないというか。リーダーシップじゃなく、フォロワーシップがすごく高くて。私はよく「ここはわからないので、やって」という風に、周りの人に投げるんですけど(笑)、任されたらすごくよくやってくれるんです。でも、なかなか自分から声を上げて「バーベキューやろう」「新しいイベントやろう」と言い出す人がいないというのが現状だったんじゃないかな。「集まって!」とか、「手伝って!」と言うと結構やってくれるんですけどね。
〇釣りとか自転車とか出来る人が、よくすぐに集まるなって思います。得意なことをもつ人が多いんでしょうか。
●みんな、ポテンシャルがすごく高いんですよ。だから、もったいないんです。すごくみんなできるし、準備とかもすぐにできますからね。
それこそ、バーベキューとか釣りとか、最初は私がプログラム作りや行程表作ったりとか、ポスターも作っていたんですけど、自分だけでやるのはもう無理と思ったので、今では「ポスター、誰が作りますか?」って投げますね。でも、意外とみんなできちゃうんです。ポスターも、カッコいいの作ってくれましたよ。
 あと会計も、ベースは私が作ったんですけど、「会計、考えましょうか」ってみんなに投げかけて、何がいくらかかって…とか全員で書き出して、収支の計算もみんなでやりましたね。
〇まさに「言い出しっぺ役」が来たという感じですね。
●今までは、若手の集まる機会や場を作ってほしいという声のもとで、自分が好きなことをやりたい!と私発信でやってきたんですが、今後は、もう少し地域の要望を取り入れてやっていけたらいいなと思っています。
〇地域の要望とはどんなものなんでしょうか。
●どのイベントも、反応してくれるのが赤泊の地域外の人が多いようには思っています。
 最初、若者部会でも「若者に活気がない」と言われていたように、活躍している人はいるんですが、固定メンバーで、限定的なので、もう少し掘り起こして広がってほしいという要望はあると思います。そこが課題かなと…難しいところだとは思いますが。

渋谷さんの考える、これからのこと

〇地域内で、どんな立ち位置でいたいと思いますか。
●声を拾って「やろうか」と言える人でいたい。「やりたいけどちょっと無理そうだな」という人たちの声を拾って「一緒にやろうよ」と声を掛けて、一緒にできるというのが、自分が役に立てる部分かなあと思います。
新しいことをやるのに萎縮してしまうことって、特に田舎だとよくあると思うんですが、私はヨソモノだから、いっそうまく使ってもらって、「またあいつ何かやってるわ」って私を前に出すことで、地域の人が新しいことをやれたらいいなあとは思います。
 結局、協力隊ができることって種まきだと思うんですけど、私と一緒にイベントやっていた人や見ていた人が、そういえばあんな人が何かやってたなとか、あいつといたとき、イベントでこういうことしたなとか、後々思い出したりして、前もできたし、今度こういうことやってみるかとか、そこから何か新しいことが始まったら嬉しいですね。

渋谷さん

〇任期後については考えていますか。
●私は、今のところは佐渡に残ろうとは思っているんですが、地域の活動に関われる時間って今と比べるとどうしても少なくなくなってしまうと思うんですよ。協力隊時代は、地域での活動をしているだけでも給料がもらえていたけれど、それはなくなってしまうので。自分の生活のためにお金を稼ぎつつ、地域とどうやって関わるのかを考えておかないとなとは思っています。
 あと、イベントについては、どうしても続けるということだけが全てではないと思っていて、一時期は「継続しなきゃ」と思って怖かったんですが、よく考えれば、私がいなくなってお終い、となるのも、それはそれで1つの形なんじゃないかと思うんです。
〇それは斬新な考え方ですね。
●よく継続とか後に残るっていうのが活動の成功例とかであるし、私もそう思っていたんですが、たとえそれ(イベント)自体が終わりになってしまっても、そこでやった経験とか思い出や感情が心の中に残っていて、また時を経て話したり、別のことをやってみたりということに繋がっていったのなら、私の種まきとしての成果にはなるんじゃないかなと思っています。
 形だけ残って、嫌々やるのほど辛いことはないし、肝心の心の部分が忘れられるのも違うと思うんですよね。
 先日、釣りイベントの主要メンバーで集まったときにも話したんですが、「私もあと1年でいなくなるし、1年イベントをやってみて疲れたっしょ?やりたくないなら辞めるのも手なんだけど、どう?」って(笑)。
 その時は、今年は釣りイベントを2回やってみて、まだ不完全というか、みんなももう一歩と感じたようなので、とりあえずもう1回やりたい、という話をしました。本音ですよね。
あと1回やってみて、私の任期が終わるタイミングで終わるかもしれないし、もうちょっとやろうとさらにもう1回続けることになるかもしれないし、そこは私が何か言うことではないかなと思います。
〇確かに、形だけ残っていくのは地域おこしではないように感じます。
●行事とかって、始めるときはいいんだけれど、やめられなくなってしまって、疲れ切ってみんなやっていることがよくあると思うんですが、そうなりたいわけではないんですよね。
 形はなくなっても思い出が残って、その話を聞いたまた別の人が、いいなあとか、やりたいなって思えたらすごく良いじゃないですか。

釣りイベント成功の理由は、「熱い思い」と「このメンバー」

釣りイベント成功の理由は、「熱い思い」と「このメンバー」の画像

 後半は、渋谷さんが特に手ごたえを感じていたという「釣りイベント」を共に主催したメンバーである、赤泊商工会の青年部の藤井隆明さん(青年部長・写真右から2番目)、外内陽平さん(写真右)、金子夏輝さん(写真左から2番目)に集まってお話ししていただきました。

(以下、敬称略)
武田(インタビュアー))釣りイベントが始まったきっかけについて教えてください。
藤井)そういえば、なんで釣りが始まったんだっけ?
渋谷)藤井さんはいたでしょ(笑)。去年の2月くらいにはすみ会の集会で、釣りと自転車のイベントやらないかと話があって、この2人(渋谷さん、藤井さん)がその場にいて、仲間を集めてやろうかとなったんです。
藤井)最初話を受けて、すぐに陽平に言ったんだよ。そして、夏輝がやっぱり漁師さんだから、一番釣りのことを知っていると思って、商工会の固定電話から電話したんだよね。
金子)いきなり来てっていうからビックリしましたよ。
藤井)そこでこの4人が集まって、釣り、イベント、コスプレのイベントをやりたいんですっていう話をしたんだよね。
外内)その時は、内容なんてまだ何もなかったしね。
藤井)赤泊で新しいイベントというものがこれまでなかったから、渋谷さんが来て、「やろう」と言ってくれたのが始まりだったと思います。既存のお祭りを前年度と同じくやるというのが基本だから、まったく新しいことをやろうという発想がない。よほどトップの人が新しいことをやろうと言わない限り、ないと思う。
 商工会も、担う人が少なくなってきている中で、新しいことをやるのは、かなりしっかりした組織がないとできないと思う。でも、赤泊の商工会青年部は、わりと組織がちゃんとしているから人数が少なくてもできているんだけど、佐渡の他の地区の商工会でできるかと言ったら、人数多いところでも、できないところあるんじゃないかな。
渋谷)赤泊の商工会青年部はすごいと思いますね。婦人部もそうだけど、すごく元気ある。
藤井)夏輝にしても、陽平にしても、俺からお願いしている部分がたくさんある。それをやってくれるこのメンツがいるおかげで成り立っていると思うんだよ。普段は言わんのだけど(笑)。
外内)やっぱり、藤井くんはめちゃくちゃ頑張ってくれているし、部長になってまとめてくれているから、助けてあげたいというのが一番あったと思うし。夏輝もきっと一緒の気持ちだと思う。
藤井)俺の中では、こういう新しいイベントをやるという経験ができたことって、すごく良いことだと思ってるの。今までってさ、商工会青年部のイベントは、港まつりとイルミネーションがメインで、単発のものしかなかったんだけど、それ以外に何かしましょうと、言い出してくれる第三者的な人がいないと、なかなか難しいのかなあと思う。
新しいことをやるには、自分たちが思いを持っていないとできないし、今は近くに、このメンバーのようにその思いをわかってくれる人がいるおかげでできていると思っています。

釣りイベント成功の理由は、「熱い思い」と「このメンバー」の画像1釣りイベント成功の理由は、「熱い思い」と「このメンバー」の画像2

武田)言い出しっぺ役がなかなか少なく、それを渋谷さんが担った部分もあるということでしょうか。
藤井)商工会青年部は地元を盛り上げていかなければならないわけだから、やっぱり地元のために何かしたいという思いはある。それを実行に移すきっかけを作ってくれたのが渋谷さんだったと思うよ。
 実際、何か企画しようとしたときに、上に立たないとわからない部分って結構あるんだけど、今回、釣りのイベントでそういう経験ができたのかなあと思う。
 青年部長は、2年任期なの。2年経って、「やっぱりこうしておけば良かったな」という思いが結構ある。上の立場に立ってみて、何年か経って、こうしてわかることってあるんだけど、こういう(イベントの実行委員会)会って、上下関係なくできるから、若いうちからこういう経験ができるのがすごく良いと思う。
 年功序列ではなく、実力社会じゃないけど、思ったことをやれる社会になればいいのかなと俺は思ってる。それと、部長だから何かしなければ、とかではなく、青年部みんなで何かやれば良いんじゃない?って発想にみんながなっていけるきっかけにも(釣りイベントが)なったんじゃないかな。
渋谷)そういうの、良いですよね。そうなっていったらいいなあ。
藤井)何でもトップが背負ってやっていく、という方法ではなくて、みんなが考えて、もっと赤泊を良くしようという気持ちになってくれるといいな。
 今、自分は2年目だけれど、2年任期じゃ足らん。だって、色んなことやりたくなるもん。たとえば、寺泊商工会青年部との交流会とかもやりたいし。すごく面白いと思うよ。

釣りイベントを通して一歩踏み出したメンバーが考える、これからの赤泊と佐渡

メンバー手作りのイベントポスターの画像
メンバー手作りのイベントポスター

武田)これからの皆さんの抱負や意気込みを教えてください。
外内)釣りに関していえば、これまで2回やって、3回目計画中なんですけど、4回、5回…10回目まではいきたいな。渋谷さんにも引き続き協力してもらいたいし、いつかせがれが生まれたら、せがれとも一緒に釣りをしたいね。
藤井)せがれって言葉久しぶりに聞いた(笑)。

藤井)赤泊が、じゃなくて、佐渡がそうなんだけど、佐渡市になったのに、商工会の佐渡全体のイベントってない。せっかく佐渡中の商工会があるのに、何もしていないのはもったいないなと思う。また、県商工会から各商工会に出ている補助金もあるんだけれど、交流事業にお金を使うようにしたほうが良いんじゃないかなと思う。
 佐渡って、そういう新しいことができないのかなって、自分が部長になって悶々としている部分があるというか。思ってはいるんだけれど、実際賛同してくれる人がいるかっていうと。10部長が同じ思いならいいんだけど、俺は別に会長でもないし、佐渡の中では一理事でしかない。
 思いは、すごくある。でも、たとえば寺泊商工会から交流事業しましょうとか、渋谷さんから企画の提案をもらったり、できるかどうかは、各商工会の技量というか、やってみようかって一緒にやれる仲間がどれだけいるかだと思う。俺には、一緒にやれる仲間がいたおかげで継続できている。意外と商工会は既存の事業をずっとやっていることが多いし、そこは変わっていかない。
外内)島内全体のみんなの方向性がそこにいかないと、なかなか進まないですよね。
藤井)赤泊がイベントをやりましたって、ただそれで終わるのはもったいないなと思う。
 相川や両津などの大きいところと比べると、赤泊の商工会青年部って10人くらいしかいない。でも、人数は関係ないとは思っていて、新しいことを受け入れられる体制があるかどうかだと思う。


釣りイベントを通して一歩踏み出したメンバーが考える、これからの赤泊と佐渡の画像1

藤井)部長になるときに、やりたいなという意志や思い入れはあったんだけど、実際に部長になってみると、意外と「役」が多すぎて、「何もできんわ」と思っていたときがあって。そんなときに、この会があってよかったなと。俺ができんかったことを赤泊でやれたという実績ができたのはよかった。
武田)赤泊の取組を他の地域に広げていくビジョンはありますか。
藤井)部長が自分以外に9人いて、その人たちがどう思うか。じゃあ誰がリーダーシップをとるかというのは難しいところかな。
渋谷)たとえば、赤泊での釣りでも寺泊との交流でもそうなんですけど、何かやったことある人たちがいて、「やったらめっちゃ楽しかったし、ここでもやろう」と他の地区の人に思ってもらえたら良いんじゃないかな。
藤井)そう。俺は前例を作ってあげたいと思ったの。
渋谷)やっぱり、前例があると違いますよね。
藤井)他のところだと、イルミネーションをやるのに補助金使ったりしているんだけど、交流やった方が地元にお金落ちるわけじゃない。
渋谷)誰が初めてやるか、というところって難しいし風当りも強いと思うんですけど、協力隊を使ったり、こういうやる気のある部長さんが1つやってみて、1回成功すると、たぶんみんな真似し出すんですよね、割と。
藤井)そうだよね。最初の人、すっごく大変だけどね(笑)。

釣りイベントを通して一歩踏み出したメンバーが考える、これからの赤泊と佐渡の画像2

藤井)1つのことをやるには、人がいる。誰が抜けてもダメ。それがスマイルフィッシング(イベント名)。このメンバーだったからできたと思ってる。やっぱり、1人じゃできんからね。
外内)1人じゃできないですよね。
武田)10回までは続けるんですよね。
外内)続けばいいなあという感じ(笑)。
藤井)夏輝が部長の時に集大成ができるかも。
外内)マグロ釣りに行こうぜ。
渋谷)釣ってみたい(笑)。
金子)大間まで行かないと(笑)。
藤井)偏見かもしれないけれど、俺はバカをできる人が好きなの。普通の発想じゃないイベントをしようと思えば、バカしか思いつかないと思う。普通の真面目な人が集まった会議は、当たり障りのない、硬い感じに終わるわけだよ。俺たちにできることは、「バカさ」だよね。
渋谷)確かにそうですね。普通は「釣りマラソン」なんて思いつかない(笑)。


―渋谷さん、藤井さん、陽平さん、夏輝さん。ありがとうございました!

釣りイベントを通して一歩踏み出したメンバーが考える、これからの赤泊と佐渡の画像3

【編集後記】
 最初、渋谷さんについては、目立つタイプの協力隊なのかなという印象を持っていました。それは、島外でも島内でも、渋谷さんのファンがすごく多いというのを感じていたからです。そんな渋谷さんの日ごろの活動に興味をもって現地へ伺ったのですが、地域内での渋谷さんは、想像していたようなどんどん前に出ていくタイプではなく、とても冷静に地域のことや、周りの人たちの様子を見て、そっと寄り添うような活動をされていました。その幅広い好奇心と人脈で、周りの人の思いを汲んで、その思いに忠実に、次につなげていくような存在なのかなと現地でお話を聞いて感じました。
 そして、商工会青年部の皆さんは、とにかくもっと赤泊や佐渡を良くしたいというエネルギーに溢れていました。それはきっと、藤井さんというとても熱意のあるリーダーがいたことと、それに共感する仲間たちが周りにいたということ、その仲間の中に、地域や周りの人のことをよく見て、その思いをつなげる渋谷さんがいたことが、奇跡的に同時期に重なったことが、赤泊の若い人たちが一歩前に踏み出そうとしている大きなきっかけを生み出したのだなと感じました。
 また、地元の若い人たちがこんなに本気で地域のことを考えているんだ、というのは個人的にも刺激を受けましたし、こんなふうに、年齢は関係なくやる気のある人たちが思いを形にする、という例が、佐渡や県内にも広がっていけば良いなと思います。

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