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【第18回 ピックアップ!地域づくり人】中野 雅嗣さん(長岡市/NPO法人ふるさと未来創造堂常務理事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0120551 更新日:2019年6月29日更新

 「NPO法人ふるさと未来創造堂」は、長岡市を拠点として、「わくわくする防災教育」を契機とした地域一体型の教育社会の再建と創造を目指しており、県内の小・中学校を主な対象として活動を行っています。「ふるさと未来創造堂」を立ち上げたのはどんな方なのか、どんな想いで防災教育に携わっているのか。立ち上げた本人であり、現在は常務理事として日々活躍されている中野雅嗣さんにお話を伺ってきました。

幼少期の経験からまちづくりに目覚めるまで

中野雅嗣さん
第18回地域づくり人中野雅嗣さん

中野さんがふるさと未来創造堂で今の活動を始めようと思ったきっかけは何ですか?

 子どもの頃から人と会うのが大好きで、知らないところに行って、初めて会う人と話すのがすごく好きでした。今思うと、「人と会うのが好き」と思える環境にいたことがきっかけなのかなと思います。私は生まれも育ちも長岡でして、私の小さい頃は年代や性別、住む場所が異なる様々な人たちと会う機会に恵まれていて、色んな人が集まるお祭りや行事等の様々なイベントが地元長岡の中にたくさんありました。
様々な人と会って、その人個人が持つ考えを聞くと、新しい気づきがたくさんありますよね。偶然出会った人との関わりから得られる学びによっても、人は互いに成長していきます。私は、自分自身が子どもだった頃の長岡のような、みんなが共に育み合うことのできる社会を再び作りたい。この想いから「ふるさと未来創造堂」の理念の一つに「共育社会の再建」を掲げています。

中野さんの子どもの頃のご経験が、そのまま現在の活動の原点になっているのですね。
 学校卒業後は、最初から仕事としてまちづくりに関わっていたのでしょうか?

 いえ、最初は仕事の傍ら、プライベートで人が集まるイベントの企画等を行っていました。長岡で音楽の野外フェスや新潟県中越大震災の震災復興祈念事業を開催していたこともあります。「みんなで何かを成し遂げる」ということの達成感はたまらないですね。
新潟県中越大震災から6年目の平成22年には、「皆で楽しみ、交流できる感謝の祭典を企画して、新潟県中越大震災から学んだ『人と人のつながりが最大の防災力になる』ことを全国に発信しよう」という想いを持った仲間たちと集まり、市民団体を立ち上げて、復興祈念事業の企画を提案しました。私たちのような市民団体の考えていることが本当に実現できるのか不安もありましたが、毎年長岡市で復興祈念事業を開催していた中越防災安全推進機構から協力していただいて、無事『多地域・多世代・多国籍 みんなでつくろう大きな”縁” 交流ひろば えんえんマーケット♪』を開催することができました。
 イベントの企画や開催が、自分の好きな長岡のまちづくりにつながる。こんなにわくわくすることはない。より深く関わりたいという気持ちが強くなっていきました。

「ふるさと未来創造堂」立ち上げの経緯

その後、どのように「ふるさと未来創造堂」立ち上げへつながったのですか?

 新潟県中越大震災6周年の復興祈念事業での縁がつながって、同年に中越防災安全推進機構からお声がけをいただき、新潟県の防災教育の教材開発や仕組みづくりに携わる機会を得ることができました。現在、県内の小・中学校の防災教育で活用されている「新潟県防災教育プログラム」を、防災や教育の専門家や関係機関、学校現場の先生方と3年かけて作り上げました。完成した新潟県防災教育プログラムは県内の学校へ配布されましたが、それを読めばすぐに防災教育に取り組めるかというとそうでもないのです。教員は、防災のプロではありません。そして、防災の専門家や関係機関等も、教育のプロでは当然ありません。子どもたちにとって、生きた学びにするにはどうすれば良いか、互いの専門分野を生かし合い、一緒に考えていく必要があります。また、防災教育の定着と推進のためには、学校所在地の地域性等も考慮しながら、継続していける各校の防災教育カリキュラムやプログラムづくりのサポートも不可欠です。多忙な先生の負担を減らしつつ、防災教育の有効な進め方を模索するという、仕組みを作るという仕事と現場で支える仕事を両方経験した結果、私がやりたいのは「現場」で先生と子どもをサポートすることだと思いました。現場にいながら、先生・子どもの応援団になりたい。その気持ちが強くなったので、独立して「ふるさと未来創造堂」を立ち上げるに至りました。

防災教育というと、避難場所の確認など、非常時に備えた訓練などが思い浮かぶのですが、「子どもが学んだことを生かせる防災教育」とは、具体的にどのようなものなのでしょうか?

 まずは、防災を大人も子どもも自分事として捉える。自分から学びたいと思えるように学習者の学習動機を高めることが大切だと思います。防災教育は「正しい知識を教わる・覚える」というイメージがありませんか。でも、教わるだけの知識では実際に災害があった時に、本当に生かせるか、被害を減らすことにつながるのか、疑問に思います。真剣に学びなさいと言われても、自分事として実感を持てなければ教育効果はあまり期待できないように感じます。
 また、防災って「災害から命を守る」ための学習にとどまらず、「自分の地域をより深く知る」ことにもつながると思います。自分の地元はどんな産業があって、どんなことをがんばっているのか、地域の生い立ちや先人の思い等を知ることで、地元を誇りに思うことができますよね。新潟県に住む限り逃れられない自然災害の危険性とも向き合い、正しく恐れること。私はそれが本当の郷土愛だと思います。
 自分が誇りに思う地元のためならば、子どもたちから「地元を災害から守るために、こんなことがしたい」という気持ちが生まれますよね。その「したい、やりたい」を引き出すことが大切なんです。子どもたちの防災意識が高まるだけじゃなく、地域・人を大事にしたいと思った子どもたちが地元と関わるきっかけにつながる。地域の人同士のつながりが深まれば、災害が起こっても助け合える、万が一の事態に強い地域になるのではないかと思っています。

親子防災講座(新潟市)の様子の画像
親子防災講座(新潟市)の様子

中野さんの考えるこれからの防災教育のあり方とは?

防災キャンプ(新発田市)での足湯体験の様子の画像
防災キャンプ(新発田市)での足湯体験の様子

これからの展望として、どのようなことをしようと考えていますか?

 私の考えが社会から見てどうなのか、社会から客観的に見て防災教育の必要性を判断してほしいと思っています。
 そのためのツールが「こども防災未来会議」。これは「ふるさと未来創造堂」が4年前から行っているイベントで、防災教育について学んだ県内の小・中学生が、自分たちで作ったかべ新聞をもとに他校の子たちとの意見交換を行ったり、「こんな地域・社会になったらいいな」という提案をしたりします。子どもにとっては、自分の意見を発表する経験を積んで自信がつくだろうし、同じ分野を学んだ他の学校の子たちと意見交換をすることで、新たな気付きや知識も得られます。また、子どもたちの意見を社会に発信することで社会全体の防災意識の啓発にもつながると考えています。
 ただ、子どもの学びになるとか、社会全体への啓発につながるって、私らふるさと未来創造堂の見解でしかないのです。だから私は、このこども防災未来会議が本当に必要なのかどうか、社会に問いたいと考えています。

 こども防災未来会議は今年で4年目を迎えます。過去3年間は補助金で運営をしてきました。だけどこれからは補助金に頼らず運営できなければ、事業を継続していけません。なので、今年はクラウドファンディングで運営に係る寄付を募ります。お金が絶対ではないですが、もし寄付が集まったなら、こども防災未来会議は新潟に必要であるという一つの判断材料になりますよね。これからは私たちの活動が社会に必要な取組かどうかを諮る等の事業評価も行いながら、安心・安全な未来の新潟の実現に向け、活動を継続・発展させていくつもりです。
 さらに言うと、ゆくゆくは新潟県の防災教育を、「ふるさと共育」という表現に変えたい。災害による被害を少なくする、というのは現代社会における解決困難な課題の一つですよね。それに対して自分がなにかやってみた、という経験は、これから子どもたちの人生で解決困難な壁を乗り越えるときに役に立つのではないか、と考えています。防災について学んだからといって、必ずしも防災のプロフェッショナルになってほしいとは思っていません。「防災」を通じて自分の「ふるさと」をより深く知り、郷土愛を深める。大切なものを守るために、自分に何ができるのか考えることで、子どもたちに未来を切り拓く力をつけていってほしい。自然災害による犠牲者“0”の実現を目指して、ふるさとを知り、防災・減災意識を育む。安心・安全な未来のまちづくりについて大人も子どもも一緒に考え、実践していく学習機会ということで「ふるさと共育」。社会全体で防災教育の認識をそんな風に変えることができないか目論んでいます。

 穏やかな口調で熱い想いを語る中野さん。防災教育を通じた共育社会づくりに挑む根源には地元・長岡への深い愛があり、その郷土愛が防災教育、ひいては社会を変えるために挑戦し続けるエネルギーへとつながっているのではないかと感じました。中野さんとふるさと未来創造堂の今後から目が離せません!

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