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新潟県ホーム の中の自然・環境の中の島民クローズアップ・インタビュー(テーマ:“育む(はぐくむ)”)vol.43
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島民クローズアップ・インタビュー(テーマ:“育む(はぐくむ)”)vol.43

2016年10月21日
 島内で頑張っている人を紹介する「島民クローズアップ・インタビュー」をお届けしています。
 毎月、佐渡地域振興局の各所属や事務所が「育む(はぐくむ)」というテーマをもとにふさわしい方を訪ね、インタビューを実施します。
  ※インタビューの記事は、6月,8月,10月,11月,2月に更新します。

 第43回目となる今回は、一般社団法人 佐渡生きもの語り研究所理事長の仲川純子さんを訪問しました。
   
 佐渡生きもの語り研究所は、環境と経済が循環する持続可能な社会の実現を目指して、田んぼの生きもの調査の普及や環境教育など、様々な活動に取り組んでいます。

 トキと暮らす郷づくり推進協議会副会長、NPO法人トキどき応援団理事なども務め、多忙な毎日を送る仲川さん。
 トキの野生復帰に向けての活動に関わったことが今に繋がっているという、仲川さんの“トキ”への想いをお聞きしました。

佐渡生きもの語り研究所理事長 仲川純子さん

Q1 佐渡生きもの語り研究所を創設された経緯と社名の由来を教えてください。

 トキどき応援団の理事としていろいろな取り組みをしていく中で、トキの野生復帰はトキだけのことを考えればよいのではないことがわかってきました。
 大事な餌場である田んぼや農業のこと、里山など環境のこと、観光も当然関係してくる。結局、佐渡全体のことが関わってくる。
 そんな中、認証米制度の取り組みを継続していくためには、アウトソーシングの団体が必要だという佐渡市からの要請を受けたこともあり、私と4人の農家の方たちで立ち上げました。
 
 社名は、認証米農家さんが生きものを育む農法に取り組む中で、自分の田んぼにどんな生きものがいるかをしっかり見てもらい感じたことを文章で語ってもらう、「生きもの語り」という運動からきています。
 また、佐渡の生物多様性を目指していく中で自分たちでもいろいろな生きものについて伝えていきたいという気持ちもあって、『佐渡生きもの語り研究所』という名前にしたんです。


  *朱鷺と暮らす郷 認証米 ・・・ 認定基準に適合した、農薬や化学肥料を減らし、
                     「生きものを育む農法」で栽培されたお米

「佐渡生きもの語り作品集」

Q2 トキに関心を持つようになったのはいつ頃、どのようなきっかけですか。

 
 平成6年にトキの森公園で受け付けをやることになったのがきっかけですね。
 私が佐渡に来たときは野生のトキもいなかったし、野鳥には興味があったんですがトキは対象外というか、何も知りませんでした。

 受け付けを始めて、いらっしゃったお客さんからトキのことについていろいろ聞かれたときにその場でお答えしたいなと思い、トキの本を読んだりして勉強を始めたんです。
 そこで、トキやトキを保護していた人たちの想いを知って、自分なりにその思いを引き継ぐというか、「一緒にやりたい」、そういった気持ちで保護活動を始めました。



Q3 トキの生息環境整備として、いつ頃から、どのようなことをされてきたのですか。

 最初はトキどき応援団として平成14年くらいから、清水平のビオトープ作り、トキの餌場作りですね。
 放鳥されたら清水平にも再びトキがやってくればいいなあという想いでずっとやっていました。
 ただ、もしトキが来なくても、そこがかつて初代のトキ保護センターがあった場所であり、近辻さんを始め飼育員の方たちが苦労された場所でもあるので、そういった意味でもそこは残す価値があると思っていました。
 作業を続けていくうちに、ビオトープであっても田んぼのように管理していると、生きものにとって棲みやすい環境が保てるんだということがわかったんです。

 現在は、田んぼで生きものを育む農法のひとつである江の設置や補修作業をして、生きものを増やす取り組みをしていますし、里山の手入れにも取り組み始めています。
 また、大学生と一緒に環境整備を行ったりと、ボランティアの受け入れも始めています。

大学生のボランティア作業

Q4 トキに関連して、子供の環境教育にも積極的に取り組んできていますが、どのような取り組みをしてきたのですか。

 
 佐渡市の委託事業になりますが、「佐渡Kids生きもの調査隊」です。
 田植え、稲刈りなど田んぼの作業をしながら生きもの調査をし、体験を通して田んぼの生きものと人とのつながりを考えてもらいます。
 小学校3年生から6年生まで、最近は中学生の先輩隊員も加わって、月に1回か2回、5月から3月まで活動しています。

 この「調査隊」の発展系が独自事業の「さど里山こびりぃ隊」です。
 田んぼや竹林などを手入れすることで自然から得られる恵みがあることを学ぶ活動になっています。
 作業した竹や藁を使って門松づくりをしたり、自分たちで取った笹で笹団子を作って食べたりして、里山の恵みを楽しんでいます。

「佐渡Kids生きもの調査隊」の江の補修作業

「さど里山こびりぃ隊」の門松づくり

Q5 活動の成果は上がっていると感じていますか。

 
 野生のトキが増えたっていうことはそれだけの餌が佐渡にあるということです。
 それは私が活動しているからということではなく、農家さんやトキを見守るいろいろな方たちがいるからですが、今のトキの状況を見れば、みんなの活動の成果は上がっているんだろうなあと思います。

 環境教育については、佐渡にいる生きものや生物多様性について勉強しようという学校がもっともっと増えてくれるといいなあと思いますね。



Q6 平成20年から計14回233羽のトキが放鳥され、200羽近くのトキが野生下で生存するところまできました。この点についてはどのような感想をお持ちですか。

 ひとつはトキに向けて「頑張ったね」って言いたいですね。
 飼育下で育ったトキが3か月の訓練ののち外に飛び出して、いろいろ苦労もあったでしょうが、それでもやっぱり自分の種を残すためにたくましく頑張って増えていったということを考えると、まずはトキに頑張ったねって言いたいです。
 
 もうひとつは、トキの餌が増えるような米作りをしたり、ビオトープを作ったり、モニタリングを続けたりと、トキの野生復帰を支えている人たちの力は素晴らしい。
 そして、これからも継続していかなければならないと思います。
 ここまで増えたかっていう嬉しさもありますが、まだまだこれからだっていう気持ちもありますしね。

第1回 トキ試験放鳥式典

Q7 今後5年後の新たな目標として、島内に220羽の定着を目指す事となりましたが、目標の達成に向け、新たな取り組み等、どのように考えていますか。

 
 トキの放鳥がスタートした頃は大きくニュースで報道されて話題になり、全国的にも注目を浴びていたと思うんですが、年数が経つにつれ少しずつ注目度が低くなってきたような気がします。
 ですから、これからもトキと佐渡のPRは続けていかなければいけないと思うので、機会があればどんどんトキのことを発信していきたいですね。
 それから、トキのために頑張っている佐渡の人を助けるために、島外のボランティアの方たちを呼び込む取り組みにも力を入れていきたいと思います。



Q8 佐渡島にとって、また仲川さんにとって、トキとはどういう存在なのでしょうか。また、今後どのような活動をしていきたいと考えていますか。

 
 大事な宝物であり、佐渡のすばらしさを表すシンボルでもあると思います。
 自然の豊かさや生物多様性、そういったことのシンボルになりますね。
 
 佐渡は最後までトキが生息していた場所であり、日本で最初にトキが野生復帰した場所であり、ここまでトキが増えた場所でもある。
 そこは自慢していいことだと思います。
 だからこそ、シンボルとしてトキがいればいいというのではなく、トキがいるからこんなに豊かな生態系があるんだよっていうことを示せるような島作りをして、人的交流や経済の活性化に結び付けていくことが必要だと思います。



Q9 このHPをご覧になる方々へメッセージをお願いします。

   
   トキが暮らせるような自然環境について一緒に考えてみませんか。

   これからも応援よろしくお願いします。

トキが餌をとりに来る田んぼ


☆インタビュアーから☆

 トキの野生復帰を目指して始まった平成20年の第1回放鳥から8年、先日15回目の放鳥も無事終了し、現在野生下では217羽ものトキの生存が確認されています。
 最近では通勤途中、たまにですがトキの姿が見られるようになりました。日頃からケージの中のトキは見ていますが、野外のトキを目にしたときには、また違った感動があります。
 
 この取材を通じて、仲川さんを始めトキに関わる皆さんの地道な活動の積み重ねがトキの野生復帰を着実なものにしていると実感しました。
 ただ、トキの野生復帰はまだまだこれからと仲川さんはお話しされていたので、これからも精力的に活動を続けていかれることと思います。
 いつか、佐渡の空を舞うたくさんのトキの姿が当たり前の風景になる、そんな日が来ることを願わずにはいられません。
 
 トキへの優しさを感じるインタビューとなりました。