新潟県ホーム の中の自然・環境の中の島民クローズアップ・インタビュー(テーマ:“育む(はぐくむ)”) vol.9

 島民クローズアップ・インタビュー(テーマ:“育む(はぐくむ)”) vol.9

2009年03月21日
 島内で頑張っている人を紹介する「島民クローズアップ・インタビュー」をお届けします。
 毎月、佐渡地域振興局の各所属や事務所が「育む(はぐくむ)」というテーマをもとにふさわしい方を訪ね、インタビューを実施します。
 ※インタビューの記事は、毎月21日に更新します。

第9回目は、計良武彦(けらたけひこ)さんを訪問しました。計良さんは浜河内でそば屋を営みながら特定非営利活動法人(NPO法人)トキどき応援団理事長として、トキの野生復帰に向けての環境づくりに活躍されています。今回はトキ野生復帰への思いなどをお伺いしました。

けらさんのポートレート

トキ資料展示館にて

Q1 活動をはじめたいきさつを教えてください

もともと佐渡の出身ですが、高校卒業と同時に島を離れ、ちょうど2000年(平成12年)に定年を機に故郷へUターンしてきました。
勤めていた会社が、離職後の生活のために資格や技術の取得を奨励していたので、蕎麦打ちの職人さんのもとで3年間修行をし、島に帰るとすぐ店を出しました。その後2002年(平成14年)頃に知り合いの県職員の方からトキについての勉強会に出てみようよ、と誘われたのがきっかけです。
当時の佐渡トキ保護センターではトキの数が2桁になり、この調子でいくと近いうちに野生復帰の話が現実味を帯びてくるということでした。そのため、トキが野生で生活するにはどんな環境がいいのか、そういう事を近辻さん(当時のセンター長)をはじめとした講師の方から伺い、意見交換をするといった内容でした。


Q2 以前からトキについて興味があったのですか?

昔佐渡にいた頃もそうでしたし、Uターンしてからもあまり興味がありませんでした。それが今ではこう(NPOの代表に)なってしまいました。(笑)

Q3 トキどき応援団として清水平(旧トキ保護センター跡地)のビオトープの管理をされていますが、そのきっかけは?

しみずだいらでのビオトープ整備の様子

勉強会をしているうち、突然「清水平へ行こう」ということになり、行ってみたら荒れ放題。人の背丈ほどのある草がぎっしりと生えていたのでぴっくりしました。そこで草刈りを始めたのですが、夏の暑い日で、作業で汗をびっしょりかいたあとの差し入れのビールの大変おいしかった記憶があります。そんな感動を参加した皆さんが持ったから、今まで続いているのだと思います。

ビオトープ整備作業(左手前のはちまき姿が計良さん)

Q4 昨年秋の試験放鳥はどのようなお気持ちで迎えられましたか?

放鳥式に招待いただき現場にいましたが、待ちに待った放鳥で大変感激しました。
それから3~4日後にキセン城(清水平の近くで新潟大学トキプロジェクトがビオトープ作りをしているところ)でトキの目撃情報があり、早速清水平に行き固唾をのんでモニタリングしていたら、いきなりスーと飛翔してきたのでびっくりしました。大感激でした。
餌場もあるし、これでこのあたりにいついてくれると期待していたんですけれど、残念ながらすぐに他所へ行ってしまいました。

トキ放鳥式典の写真

トキ試験放鳥の瞬間

Q5 試験放鳥後のトキの様子を見て今どんな感想をお持ちですか?

試験放鳥後のトキ

各地へ飛んでいって予想以上に元気だなと感じています。
しかもどこに行ってもちゃんとエサのある場所を選んでいますよね。
実はこの近く(丸山地区)にもしばらくトキがきました。そこは、道路際で、道路の反対側では人間が作業をしているような、普通そんなところには来ないだろうなという場所だったので驚きました。個体差もあるのでしょうけど。しかもそこはかつて自然のトキがそこでエサを採っていた場所らしいので、動物の能力というのは素晴らしいと思います。

水田でエサを採っているトキ(写真提供:環境省)

Q6 個人的に今後の活動としてはどのようなことをお考えですか?

トキとの共生を合言葉に佐渡は動いていますが、トキのためだけではなく、人間のため、人間への還元がもっとあってもよいのではと思うのです。そのためには、米を作らないビオトープはまずいのではないかと最近考え出しました。
ただ今の冬季湛水田(冬水田んぼ)ではどうもトキは来ないようですから、そこは考えなくてはいけません。秋の乾燥期に完全に水を抜くと住んでいた生物が生き残れません。その時期に少しでも水があれば江を使わなくても避難しているようですから、トキにもエサを生み出し、人間にも主食と収入をもたらすビオトープ水田をもっと広げていかなければならないのではと考えています。

トキどき応援団の勉強会

今も勉強会が続いています

Q7 人とトキとの接し方についてどうすべきとお考えですか?

特別な心配をしなくても良いと思っています。節度を持ってルールを守って見守ってほしいですね。
今のところトキの一番の敵は人間ではないかと思います。トキを見たいからどうしても追いかけてしまいがちです。だからそれは気をつけなければいけません。けれど、トキとの共生を成立させるためにトキにばかりに気をとられていていたら、我われの生活が成り立ちません。これから農作業が始まれば、トキは山場へ餌場を探して移動すると思います。
今はまだお互い「おっかなびっくり」のところがありますが、佐渡の人もだんだん慣れてきてうまくつきあっていけると思いますよ。


Q8 最後にこれからの佐渡について何か一言ありましたお願いします

飛行機のイラスト

トキとは直接関係がありませんが、早く航空路を再開してもらいたいと思います。
海路だけでは特に冬の欠航のリスクが大きすぎます。海路と空路では欠航になる条件が異なるので、どちらかが動いていれば欠航で足止めをくらうことはもっと少なくなるのではないでしょうか。
これだけ観光資源の豊富なところはほかにそうないと思っているので、沢山の方に、このきれいな景色を見て、おいしい食事をしてのんびりしていってもらえるように、もっと知恵を絞らなければいけないと考えます。


インタビュアーから

計良さんには急なお願いの中で快くインタビューに応じていただきました。感謝申しあげます。

昨年9月に試験放鳥が行われ、トキ保護増殖事業は新しい段階に入りました。
これからトキと人間とがうまく共生するためにはどうしたらよいのか。答えはまだまだ試行錯誤の先にあるようです。
お話しを伺いつつ、トキにも人間にもどちらにもいい結果を出せるよう、これからも頑張っていただきたいし、私どもももっと動いていかねばならないと感じました。

佐渡トキ保護センター 中川