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にいがた農業水利施設百選「隧道に先人の苦労を偲ぶ芝倉沢水路」

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0060932 更新日:2019年3月29日更新

芝倉沢水路(しばくらざわすいろ)

随道入り口を紹介する山田さんの画像
随道入り口を紹介する山田さん

 芝倉沢水路は、十日町市(中里)清田山集落を主とする36ヘクタールにかんがい用水を送る山腹水路(さんぷくすいろ)です。
 山腹水路とは、沢・渓流等から取水し、山腹斜面を等高線に沿って縫うように作られている水路です。中山間地域に多数存在し、土水路であったり、管理用の道幅が狭かったりと、維持管理にはたいへんな労力を要します。
 ここで紹介する芝倉沢用水路は、取水口から受益のまでの延長がおよそ7キロあり、たいへん長いことが特徴です。受益地内の水路も含めると、農業用水は、末端の田んぼに届くまでに10キロ近くも旅します。

 水利施設百選に応募していただいた山田茂夫さんは語ります。
 「若い時は分かりませんでしたが、芝倉沢水路の維持管理に携わるようになって、この長大な水路が大変な労力で作られ、その後も、関係者が協力して管理してきたのが分かりました。道路内の水路はフタが掛り、目立ちませんが、清田山集落の大切な水路であり、みなさんに知ってもらいたいと思い応募しました」

山田さんの足元にあるのが取水口の画像
山田さんの足元にあるのが取水口

 右の写真は、芝倉沢からの取水部の様子です。

 芝倉沢を堰き止め、「取水口」から水を取り込みます。沢の水にはゴミや土砂が混じっているので、杭を打ち込み、玉石を置いて、用水だけが入るようにに工夫しています。鋼製のスクリーンを設置するのが一般的ですが、地元の産物を用いているユニークな方法です。
 用水路に水が入ると、すぐに余分な水を取り込まないようにする「余水吐き」、トンネル形状の「随道」があります。

随道内部の様子の画像
随道内部の様子

 芝倉沢水路には、延長7キロの間に6箇所の随道(ずいどう)があります。随道とはトンネルのことで、大部分が、掘られた当時のままの素掘り随道です。
 写真の随道は、取水口直下のもので延長が59メートル程度ですが、長いものでは159メートルもあります。随道によっては、毎年のように内部の赤土部分がくずれてたまってしまうため、一輪車等で土を運びだす作業をしなければならないそうです。
 取材時には降雨があり、通常、流れている約0.2トン毎秒よりも多量の水が流れ込んでいる様子で、随道内に入ることが出来ませんでした。

道路山側に水路がありますの画像
道路山側に水路があります

 この水路は、戦後間もない昭和26年から昭和31年にかけて積雪寒冷地帯振興対策事業により建設されました。
 建設当時は土水路でしたが、昭和55年から15年の年月をかけて、ため池等整備事業によって、水路はU字溝化されました。U字溝は、フタ付きベンチフリュームという製品を使用しており、水路巾が70~90センチ、深さが45~50センチあります。
 年月の経過で、フタの上に土が被さり、水路の様子は分からなくなっていますが、右の写真では、道路の山側に水路があります。

沢水を水路に補給する構造物の画像
沢水を水路に補給する構造物

 長い水路には、様々な仕組みがあります。
 この構造物は、沢からの水を水路本線に補給すると共に、不要な水を捨てる「余水吐」、水路に溜まったを土砂の取り除く「土砂吐」の3つの機能があります。
 それぞれの機能は、角落としと呼ばれる木の板で、水位を制御し調整しています。

ブロックで補強した箇所の画像
ブロックで補強した箇所

 また、長い水路には、地形や地質の悪い場所もあります。
 右の写真の箇所は、度々災害で崩れ、その都度、ブロックを積んで補強してきました。
 U字溝化する前は、用水路を管理する専任の方が必要なほど、維持管理に苦労していましたが、工事後は、洪水のあとに点検に行けば済むようになったそうです。途中でゴミが詰まると、集落まで水が流れて来なくなるので、すぐ分かるとか

芝倉沢堰の由来

 芝倉沢水利利用組合により建立された記念碑に、芝倉沢堰の由来が書かれていますので、紹介します。
 「昔から飲料水や用水の不足で先人の生活を苦しめ、幾度か水路の開鑿を試みたが難工事のため財力が伴わず断念せざるを得なかった。
 昭和26年に積雪寒冷地帯振興対策事業により、旧堰形を基本に水路の開鑿計画に取り組み昭和26年8月、着工事業費1,300万円を投入し昭和31年9月、全長7,000メートルの水路がようやく竣工となったが、土側溝のため水漏れが多く水路の欠壊や夕立の度に土砂の流入等で破損が激しく昭和55年ため池等整備事業(土砂崩壊止)による県第一号として認可をいただき、着工事業費3億7,000万円と15年の歳月を経て水路舗装が完工した。」

 清田山集落の標高は、およそ500メートル、毎年、雪が3~4メートルも積もるので、芝倉沢の水は、冬期間、貴重な消雪用水となります。
 芝倉沢用水路は、おいしいお米の源である農業用水を供給するだけでなく、一年を通じ、清田山集落を支えています。

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