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森林研究所たより 新潟県北部におけるタブノキの発芽特性(林業にいがた2017年11月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0058612 更新日:2019年3月29日更新

1 はじめに

タブノキは一般に夏に種子が熟し発芽するため、苗木生産は採り播きが適しているとされています。しかし、タブノキ北限域の山形県遊佐町では夏から秋にかけて種子が熟し、タブノキ林縁部では約40%が散布された年の秋に発芽し、残りは翌年に発芽したという野外の調査報告があります。そこで、山形県遊佐町に近い新潟県村上市でタブノキの発芽試験を行いました。

2 試験方法

村上市内の三面川河口右岸のタブノキ林で、2015年8月~9月にかけて約10日おきに3回、同じ範囲の歩道や林内に落下していた新鮮なタブノキの種子を拾い集め、森林研究所に持ち帰って果肉を洗い落として播種しました。

3 結果と考察

3回とも播種の約1ヶ月後から発芽が始まり、ビニールハウスに入れた直後の12月上旬まで続き、翌年はビニールハウス内で3月下旬から始まり、6月下旬~7月下旬まで続きました(図1)。

播種翌年までの総発芽数に対する播種当年の発芽数の比率は、それぞれ65%、49%、21%で、その比率は播種が遅くなるほど低くなる傾向がありました。また、早い時期に発芽した個体は本葉を3、4枚展開し小さな冬芽を形成していましたが、12月上旬に発芽した個体は5ミリメートル程度培土から上胚軸を出現させている程度であり、越冬形態は様々でした(写真1)。さらに、播種当年に発芽した個体は播種翌年に発芽した個体よりも、播種翌年秋の苗高が高いことがわかりました。

発芽は温度に依存して開始される現象であり、種子散布の期間が夏から秋にかけて十分長ければ、夏に散布された種子は当年に発芽できますが、秋から冬にかけて散布されると発芽可能な閾値を下回るために、翌年の春まで発芽が繰り越されると言われています。したがって、北限域に近い村上市においてもタブノキは夏から秋に種子が熟するため、播種当年と播種翌年に発芽時期が分離し、播種が遅いほど播種当年に発芽する種子が少なくなると考えられます。

また、タブノキの育苗では寒害を受けるとその後の成育が極端に悪くなると言われています。したがって、北限域に分布するタブノキが、発芽時期を散布当年と翌年に発芽を分離していることは、冬期の寒害に対する危険分散に寄与することになると考えられます。

4 おわりに

このようにタブノキの採種が遅くなるほど、翌年に発芽する比率が高くなる傾向があることから、種苗生産者は翌年の発芽終了を確認してから、ポットに移し替えるとより効率よく苗木を生産できることになります。

播種日ごとの発芽率の推移の画像
図1 播種日ごとの発芽率の推移

発芽したタブノキの様々な越冬形態の画像
写真1 発芽したタブノキの様々な越冬形態

森林・林業技術課 武田 宏

 

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