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森林研究所たより クロマツコンテナ苗の育苗・植栽試験(林業にいがた2016年11月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0058594 更新日:2019年3月29日更新

1 はじめに

コンテナ苗栽培は、空中根切りをするための施設での懸架栽培が基本ですが、導入経費が嵩むという問題があります。そこで、森林研究所ではこれらを簡素化できないかと考え資材・施設選びに取り組んでいます。今回はクロマツについての試験内容と結果について紹介します。

2 試験方法

露地栽培は、雪害による折損・枯損が多いと予想されました。このため、育苗場所として、通年ビニールハウス(以下ハウス)内、冬期間のみハウス内、全期間露地の3箇所を設けました。(ただし2年目は全て通年ハウス内。)この3箇所で、それぞれ懸架栽培する苗、接地栽培する苗に分けて育て、成長・枯損率を比較しました。また、キャビティ(コンテナ苗用の育苗容器)には、内壁に根を底に向かって誘導するリブ(畝のような縦筋上の突起)の入っているもの(以下「リブ式」)と、スリットが入っているもの(以下「スリット式」)の2種類を用いました。その後、2年生苗の海岸砂丘地への植栽試験を行いました。

露地での懸架栽培の画像
露地での懸架栽培

海岸砂丘地への植栽試験の画像
海岸砂丘地への植栽試験

3 結果

苗長は、「リブ式」で育てると通年ハウス内で懸架栽培した苗が大きく、「スリット式」で育てるとどのような育て方でも明瞭な差がない傾向がありました。ただし、「スリット式」はハウス内で懸架栽培すると、水切れが起こりやすいのか枯損しやすい傾向にありました。

植栽後の伸長成長量は、「スリット式」で育てた苗は全体に「リブ式」よりも大きく、その中でも懸架栽培した苗が接地栽培した苗よりも大きい傾向がありました。枯れる個体はほとんどなく、活着は全体に良好でした。

4 望ましい育苗設備とは?

以上からクロマツのコンテナ育苗には、「スリット式」を用いた露地での懸架栽培が望ましいことがわかりました。特に、1年生時は雪の影響も少なくハウスを省略した露地栽培も可能です。懸架はした方がよいという結果でしたが、架台の代わりに育苗トレイ等を逆さにした上にコンテナを設置するなど、簡素化した方法も可能です。

5 今後の展望

植栽前後の苗の地上部と地化部のバランスや、植栽した苗の成長・活着を継続調査することで、最適な苗サイズやそのサイズにするための育苗方法を確立することが必要です。また、コンテナ苗は根鉢に土がついているために保水性が高く、植栽適期が広がるといわれていますが、新潟県の栽培環境ではどうなのかも合わせて確かめる必要があると思われます。

森林・林業技術課 戸塚聡子

 

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