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森林研究所たより 長伐期化に対応したスギ人工林の成長予測について(林業にいがた2016年6月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0058595 更新日:2019年3月29日更新

1 はじめに

県内のスギ人工林面積の約6割が、収穫期である計画伐期の9齢級(41~45年生)を越えた偏った齢級構成となっており、林業労働人口や木材需要などとのバランスによって、人工林の伐期が延長される傾向にあります。その一方で、現行の森林簿などに用いられている収穫予想表は80年生までの対応が上限となっており、伐期の延長、いわゆる長伐期化への対応が急がれています。

当県をはじめとする多くの県の収穫予想表は、地位指数曲線をもとに予測された将来の樹高を、林分密度管理図に当てはめることによって作成されています。地位指数曲線は、林齢から林分の上層樹高を予測する式を表したものであり、当県のものは、特I~VI級までの地位級(林地の生産力の高さを示す指標)ごとに作成されています(図1)。

地位指数曲線の作成には県内スギ人工林の林齢と樹高の調査データが用いられていますが、現行のものはまだ高齢林の少ない時期に作成されたもので、80年生を越える高齢林に対する成長予測が十分ではありません。

地位指数曲線の画像
図1 地位指数曲線

2 新たな地位指数曲線の検討

当所では平成26年度から、高齢林の成長予測にも対応可能な地位指数曲線の開発を目的とし、県内各地の主に80年生以上のスギ人工林の調査を実施し、高齢級林分データを収集しております。各地域振興局から調査地を提供していただける森林所有者を紹介してもらい、27年度までの2年間で県内広範囲における18箇所の高齢級林分データを収集しました。

図2は、現行の収穫予想表作成に用いられたデータと平成16年度に実施されたスギ人工林実態調査のデータ、そして、今回2カ年分の高齢級林分データにおける、林齢と上層樹高を示した散布図です。散布図において推定された樹高成長曲線から、80年生を過ぎても樹高成長が継続する傾向が示唆されました。このような傾向は他県の同様な調査においても報告されています。

各調査林分データにおける林齢と上層樹高(※)  ※被圧木や枯損木を除いた立木の平均樹高の画像
図2 各調査林分データにおける林齢と上層樹高(※) ※被圧木や枯損木を除いた立木の平均樹高

3 おわりに

今年度以降も引き続き、高齢林の成長予測に対応可能であり、当県のスギ人工林の実態により適合した地位指数曲線の開発のため、高齢級スギ人工林での調査を実施するとともに、平成16年度のスギ人工林実態調査箇所の再調査も予定しております。調査地提供などの情報がありましたら、当所へお寄せいただければ幸いです。

森林・林業技術課 伊藤幸介

 

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