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森林研究所たより マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツ選抜の状況報告(林業にいがた2016年2月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0058603 更新日:2019年3月29日更新

1 はじめに

東北地方マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツ育種事業(以下「事業」)は平成8年度から選抜が始まり、今年度で取り組み20年目を迎えました。長期に渡る取組ですが、ここ数年で二次検定(後述)に12本のクロマツを合格させるという大きな成果が出ています。20年の節目に今までの報告をさせて頂きます。

2 150本から4本合格

平成8~9年に県内各地のマツ枯れ被害地で選抜したクロマツは150本。果たして本当に抵抗性があるのかどうかを調べるため、接ぎ木苗を作り、線虫接種を行いました。選抜から3年後の平成11、12年のことです。

その結果、たった4本だけが一次検定(県の線虫接種試験)に合格。合格率は2.7%でした。既に実施していたアカマツは366本選抜し52本(14.2%)が合格なので、約5分の1の低さです。

3 実生選抜の開始

実は、クロマツが合格しにくいことは当初から予想していたため、本県では選抜時に穂木だけでなく球果も一緒に採取し、実生苗として育て、接ぎ木苗と同様に線虫接種試験を行いました。この実生苗を選抜に用いる方法は新潟県独自のものでしたが、従来の方法に比べて合格率が高く、経費も抑えられるため、事業的にも正式に認められました。平成18年までにこの方法で64家系320本が一次検定に合格しました。

接種検定作業の様子(平成24年7月)の画像
接種検定作業の様子(平成24年7月)

4 二次検定合格までの長い道のり

一次検定木をさらに国でも検定することを二次検定といいます。

二次検定に至るまでには、まず一次検定に合格した個体の接ぎ木苗を数十個体分作るため、合格個体から接ぎ穂が多数採れるまで、木を育てる時間が必要となります。その後接種試験になるわけですが、合否が判明するまでに、実に10年以上を要することになります。しかし、この二次検定を省くわけにはいきません。なぜなら抵抗性採種園は二次検定合格木のみで造らなければならないと定められているからです。

5 おわりに ―選抜はつづく―

ところで、接種試験に使用する線虫は従来「島原」と名付けられたものを使ってきましたが、この「島原」よりも枯らす力が強い線虫「Ka-4」が茨城県で発見されました。これを受け、平成23年度から本県では、この「Ka-4」でも枯れない個体の選抜に切り替え、現在までに29家系60個体が合格しました。今後はこれらを育成して、二次検定合格を目指していきます。

この事業も候補木の選抜はほぼ終わり、今後は成果を待つばかりとなりました。これというのも、最初の選抜作業があってのこと。この場をお借りして、当時選抜作業に携わっていただいた育種担当の皆様にお礼を申し上げます。(そのうちの一人が筆者ではありますが)

森林・林業技術課 岩井淳治

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