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森林研究所たより 冬期に乾燥を開始した県産スギ正角材の天然乾燥経過(林業にいがた2014年8月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0058544 更新日:2019年3月29日更新

1 はじめに

 心持ち材の乾燥は高温乾燥が主流となっていますが、最近の燃料費の高騰は製材工場の大きな負担となっています。また、生産量を増やすには乾燥機の増設も必要となります。このことから、乾燥費用の低減や既存の施設で生産量の増加が期待できる高温セット処理と天然乾燥を組み合わせた方法を検討しました。この方法はすでに全国的に実績があり、森林研究所でも春期に乾燥を開始した事例について調査しています。しかし、乾燥条件が厳しい冬期間に乾燥を開始した事例はありませんでした。今回は年間を通して生産するために必要となる、冬期間に乾燥を開始した場合の経過について調査しましたので紹介します。

2 調査方法

 県産スギ心持ち正角材20本(断面135mm×135mm、長さ3000mm)を試験材としました。製材後すみやかに高温セット処理を行い、11月中旬から天然乾燥を開始しました。高温セット処理のスケジュールは、蒸煮は乾湿球温度95℃で8時間、高温セットは乾球温度120℃、湿球温度90℃24時間としました。設置箇所は当所構内(村上市)の上屋(木製カーポート)の下です。
※高温セット処理とは心持ち構造用針葉樹材の表面割れ軽減のために行う熱処理で、蒸煮により表面を軟化させ、引張応力を極力小さくした状態で表面を一気に乾燥させる技術です。

3 調査結果

 乾燥経過を示したものが図です。製材直後の含水率の平均値は73%でしたが、高温セット処理後には38%に大きく低下しました。その後冬期間(3月まで)は、平均値は3%程度しか低下しませんでした。春期から秋期にかけては平均値も低下し、含水率のばらつきも小さくなりました。約10か月経過後の平均値は20.5%となり、含水率20%を下回った正角材の割合は全体の4割程度でした。
 春期に乾燥を開始した場合では、約7か月経過後に平均値が20%を下回っていましたので、冬期に開始した場合には3か月程度は期間が長くかかるようです。
 写真は乾燥終了時の状況ですが、高温セット処理の効果により表面割れは非常に少なくなっています。
 また、乾燥費について直接経費のみで試算したところ、高温乾燥の場合に比べ6割程度の費用となりました。
 結論としては春期に比べ乾燥期間が長くなるものの、春期と同様に表面割れの少ない材を生産することができました。
 天然乾燥は場所や天候により乾燥期間に差があります。予備調査を行いその箇所ごとに検討を加えて実施してください。

乾燥後の表面状況の画像
乾燥後の表面状況

正角材の天然乾燥経過の画像
正角材の天然乾燥経過

森林・林業技術課 小柳 正彦

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