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森林研究所たより 新潟県におけるウルシのツキノワグマによる被害(林業にいがた2013年6月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0058554 更新日:2019年3月29日更新

1 はじめに

村上市猿沢地内での被害の画像
写真1 村上市猿沢地内での被害

 2011年6月、村上市でウルシの木に大きな傷が付いているのを発見しました(写真1)。漆液が流れ出し、そこにツキノワグマ(以後、単にクマ)の毛が付着していました。その横にはクマの糞がありました。そこで、村上市の漆掻き職人3名にウルシのクマ被害の聞き取りを行ったところ、2009年~11年に6林分の被害がありました。

2 主な被害状況

村上市桧原地内での被害の画像
写真2 村上市桧原地内での被害

  • 村上市猿沢地内
     2011年に1本の被害があり、6月1日~6日にクマが出没しました。爪痕や毛の付着があり、高さ29~62センチメートルに最大幅11センチメートルはぎ取られていました。人家まで約350mでした。
  • 村上市板屋越地内
     2010年に2本の被害があり、6月下旬~7月に出没したと推定できました。1本は、9×4センチメートル程度はぎ取られ、爪痕と毛の付着を確認しました。
  • 村上市桧原地内
     2010年に2つの林分で1本ずつの被害があり(写真2)、一つは、13×6センチメートル程度はぎ取られ、毛の付着がありました。6月下旬~7月上旬に出没したと推定でき、人家まで200mでした。もう一つ被害も同時期で、人家まで約100mでした。
  • 阿賀町五十沢地内
     2010年の掻いている期間中に1本の被害があり、5×6センチメートル程度はぎ取られ、毛の付着を確認しました。周辺ではスギのクマ剥ぎが多発しています。

3 なぜウルシを剥がすのか?

  • スギ同様に食用に?
     樹皮を剥がされた面積はほとんどA4サイズより小さく、被害本数もわずかでした。積極的に食用にするのであれば、被害はもっと多いはずで、食用にしているとは考えられません。
  • 匂い付け?
     被害木には毛が多く付いていたことから、漆液に体をこすり付けたと思われました。クマは、ペンキ塗り立ての看板やチェンソーの燃料をいたずらすることが分かっています。学生時代、クマ・イノシシ等の忌避剤(商品名レペラ:成分ポリアルキルピリジン、キシレン)がヒグマに対して有効か調べたことがあります。張りめぐらせたロープに忌避剤を塗り、内部に餌を置いて反応を調べた結果、餌よりも忌避剤に興味をもち、顔や体をこすり付けました。これと同様のことが起きたように思います。漆液にはクマが体をこすりつけたくなる物質が含まれているのかもしれません。

4 おわりに

 クマ剥ぎ被害は、母親から子供に習性が受け継がれると言われています。被害がない地域は、クマ剥ぎを学習したクマがいないからだと思われます。しかし、一度学習してしまうと何世代かかけて徐々にその地域で被害が広がる可能性があります。現在被害が目立たない地域でも今後問題になる可能性もありますので、注意して下さい。

きのこ・特産課 松本則行

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