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森林研究所たより エノキタケ栽培におけるピンクカビの発生と防除について(林業にいがた2005年7月号記事)

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0058569 更新日:2019年3月29日更新

 昨年の本誌4月号、経営技術情報欄で、「きのこ施設栽培で発生するしつこい害菌」と題し、発生が頻繁に見られ、かつ比較的被害度の大きい害菌として、シュードモナスとクラドボトリウムを紹介しました。その後、本県の一部のエノキタケ栽培施設において、これまであまり見られなかったピンク色の害菌が猛威を振るっていることがわかりました。ここではこの害菌の特徴、防除方法等についてお知らせします。

1 害菌の名称、特徴、特性

 この害菌の正式な名称(属名)は「スポロトリクス」といいます。菌糸は白色で、胞子形成当初も白色であるため、汚染初期は目立ちません。やがて胞子は淡桃色を帯びてくるようになりますが、これが目につく頃は、かなり汚染が進んだ状態と言えます。この胞子の色から通称「ピンク」、「ピンクカビ」などとよばれています。

 本菌は本来高温を好む性質がありますが、実際のエノキタケ栽培では比較的低温である発芽工程でも繁殖力は旺盛なようです。胞子は非常に飛散しやすく、写真(培地表面全体がスポロトリクスで覆われている)の状態では、キャップを取った瞬間に胞子が煙の様に舞い上がることになります。

培養中にスポロトリクスの汚染を受けた培地(わかりにくいが、培地表面全体がピンク色になっている)の画像
培養中にスポロトリクスの汚染を受けた培地(わかりにくいが、培地表面全体がピンク色になっている)

2 汚染時期と病状

 このカビの感染によるエノキタケの病気は、純白系品種が栽培されるようになってからはじめて確認されています。10年くらい前に、これに関する調査研究結果が長野県から報告されています。それによると、汚染時期が早いほどより重篤となり、接種~培養中期までに感染した場合は、正常なきのこは発生しないそうです。菌かき期の汚染でも発芽状態は著しく不良となり、この場合、シュードモナスなどの腐敗菌による黒腐れ症状が併発するとのことです。

 また、寄生性(きのこなどの菌糸を直接栄養源とする)が疑われており、エノキタケの品種によっても被害程度に多少の差があるようです。

3 防除対策

 予防策としては、放冷・接種室ならびに殺菌を終えた培地をそこへ移動するまでの経路の浄化があげられます。また、雑菌の菌かき機の汚染による感染例もあることから、菌かき機を清潔に保つことも重要です。

 その他、ビンキャップの種類によっても被害程度が異なると言われているため、構造的に雑菌の入りにくいものを使用することも有効だと思われます。

 一旦汚染が確認された場合、汚染されたビンを早期に除去することが必要です。この場合、汚染確認のために施設内でキャップを取ることは厳禁です。できることなら、汚染ビンは殺菌釜で消毒してから掻き出した方が良いでしょう。

 試験管レベルの実験では、健全なエノキタケ菌糸に対して、それほど強い感染力は見られていません。このことから無理のない管理条件、特に換気を良くすることが重要と思われます。

きのこ・特産課 本間広之

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