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原子力発電所の安全対策及び住民等の防護対策について
平成25年4月22日
原子力規制委員会委員長 田中 俊一 様
原子力発電所の安全対策及び住民等の防護対策について
新潟県知事 泉田 裕彦
原子力規制委員会におかれましては、昨年9月19日の発足以降、原子力事故や原子力災害への対策の検討を進めておられるところですが、東京電力福島第一原子力発電所事故から既に2年が経過した現在、事故の責任の所在が依然として明らかにされていないなど、検証・総括は不十分であると考えております。
新潟県では、「原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」から、福島第一原子力発電所事故を踏まえた課題について、平成24年度の議論の整理として、3月29日に報告を受けました。その報告書においては、技術面だけでなく、マネジメント面や法制度など、極めて多くの課題が指摘されており、国において責任ある対応が必要と考えております。
また、3月23日、新潟県は、福島第一原子力発電所事故後、初めて原子力防災訓練を実施しました。しかしながら、国の考え方や対応が明確になっていないこと等に起因する多くの課題が、訓練の進行とともに、浮き彫りになりました。
発電所の事故が発生した場合に、住民に対する防護措置を的確に実施するためには、国の考え方の明確化や法制度の見直しなどが必要になると考えています。
これらを踏まえ、原子力規制委員会におかれましては、各課題の検討を具体的に進め、実効性のある対策を速やかに構築するとともに、政府及び関係機関へも必要な対応を求めるよう、強く要請いたします。
なお、技術委員会において、引き続き、福島第一原子力発電所事故の検証を行ってまいりますので、原子力規制委員会からも技術委員会にご出席いただき、ご説明してくださるようお願いいたします。
原子力発電所の安全対策及び住民等の防護対策について
- 原子力発電所の安全対策について
- シビアアクシデント対策 1
- 地震対策
- 津波対策
- 新たに判明したリスク
- 過酷な環境下での現場対応等
- 現場対応の在り方
- 周辺道路等の整備
- 重大事項の意思決定 2
- 安全対策への取組みや考え方
- 安全対策の在り方
- 規制の技術レベルの向上
- 住民等の防護対策について
- 住民等への情報伝達・発信 3
- 事故情報等の伝達・発信
- 避難指示情報等の伝達
- SPEEDIの在り方
- 広域避難等の調整
- 広域避難等の調整の仕組み
- 避難指示、交通規制等の考え方
- 複合災害時の組織体制の構築 4
- 複合災害に対応する組織体制の構築
- オフサイトセンター機能の在り方
- 安定ヨウ素剤の配付、服用等
- 安定ヨウ素剤の配付、服用
- 安定ヨウ素剤に係る指揮系統
- 屋内退避等の状況下での災害対応
- 避難困難者への対応
- 福祉施設、病院等の防護対策
- 屋内退避施設の整備 5
- 物資供給等の支援体制の整備
- 防護対策に要する財源措置
- 防災対応の検討に際しての地元自治体の意見
- 住民等への情報伝達・発信 3
1 原子力発電所の安全対策について
新潟県は、原子力発電所の安全の確保には、福島第一原子力発電所事故の検証・総括が不可欠と考えております。
ついては、新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会において、平成24年度の議論で整理された下記の課題について、具体的な対応策等の検討をお願いします。
- シビアアクシデント対策
シビアアクシデントに対応する専門組織体制について、個別の事業者だけでなく、国として整備してください。また、シビアアクシデントに対応する要員や専門家を育成してください。 - 地震対策
免震重要棟(緊急時対策所)は事故対応の拠点となる施設であり、原子力施設上の重要度分類に位置づけてください。また、設備の耐震性向上のために、安全性確保に照らし、送電・変電網を含むB・Cクラスの設備を見直してください。 - 津波対策
電源盤・ポンプ・非常用電源について、想定する津波の高さに対する施設の裕度の考え方を整理してください。また、防潮堤、水密化などの津波対策施設についても、重要度分類の基準を検討してください。 - 新たに判明したリスク
使用済み燃料プールや集中立地のリスク等、新たに判明したリスクに対応する安全基準を設けてください。また、耐震審査指針の「残余のリスク」にどのように対応すべきか、併せて検討してください。 - 過酷な環境下での現場対応等
- 現場対応の在り方
高線量下において作業をすることを想定し、法律に規定する被ばく限度や限度を超えた場合の作業の方法に加え、要員の作業に関連する法整備を検討してください。 - 周辺道路等の整備
国等において、重要設備へのアクセスルートに加え、要員参集や資機材輸送に用いる発電所周辺道路等を整備してください。
- 現場対応の在り方
- 重大事項の意思決定
原子力災害時における海水注入等の重大事項の決定については、経営への配慮等により遅れが生じないよう誰がどう対応すべきかあらかじめ検討し、さらに、経営上大きな影響のある判断を躊躇なく行えるよう、国として廃炉となった場合の保険制度などを整備してください。 - 安全対策への取組みや考え方
- 安全対策の在り方
国は、安全に関する個別事項だけでなく、大局的な視点で安全対策を組立てることが必要であり、世界の動向を注視し、積極的かつ継続的に規制に取り組むとともに、事業者の継続的な安全向上の努力を積極的に促すような規制をしてください。 - 規制の技術レベルの向上
規制と事業者の逆転現象が生じないよう、規制の技術レベルを向上させる仕組みを構築し、機器故障や自然災害だけでなく、テロに対する備えや、米国のいわゆる「B.5.b」のような考え方も取り入れて対応してください。
- 安全対策の在り方
2 住民等の防護対策について
下記の事項について、原子力災害対策指針への反映も含め、速やかに具体的な対応策等の検討をお願いします。
- 住民等への情報伝達・発信
- 事故情報等の伝達・発信
放射性物質の放出量等を始めとする住民の安全・安心に関わる情報については、リスクコミュニケーションの方法を研究の上、一次情報を保有する国、事業者、関係機関から正しい内容がダイレクトに伝達される体制や、迅速に公表ができる仕組みを構築してください。
また、原子力事業者が発信する事故情報等については、住民が理解できるような分かりやすいものとなるよう、その内容や発信方法を工夫してください。 - 避難指示情報等の伝達
住民等(自家用車避難者、自主避難者、旅行者、現場作業者等を含む。)に対して、避難指示や事故状況等が、電波障害地域を含めて広域的かつ迅速・確実に伝達されるよう、仕組みや手法を確立してください。 - SPEEDIの在り方
SPEEDIネットワークシステムによる放射性物質の拡散予測については、どのように住民避難等の防護対策に活用し、どのような方法で住民に提供するのか、明確に定めてください。
また、原子力災害時における放射性物質の放出予測情報については、複数の原子炉が故障することを考慮するとともに、その結果を速やかに公開してください。
- 事故情報等の伝達・発信
- 広域避難等の調整
- 広域避難等の調整の仕組み
市町村又は都道府県の圏域を越える広域避難に備えるため、避難先、避難ルート、避難手段等の調整や、多数の避難者の食料・物資の調達等について、国・自治体がどのように行うのか、明確に定めてください。 - 避難指示、交通規制等の考え方
原子力災害時の避難指示系統等の在り方のほか、高速道路やJR等の交通規制や誘導の考え方を明確にしてください。
- 広域避難等の調整の仕組み
- 複合災害時の組織体制の構築
- 複合災害に対応する組織体制の構築
複合災害時においては、国・自治体において、オフサイトセンターでの対応も含め、原子力災害や自然災害の対策本部が複数立ち上がるため、それぞれの役割及び指揮系統が錯綜し、混乱するおそれがあります。
このため、複合災害に迅速・的確に対処することことができるよう、災害対策基本法や原子力災害対策特別措置法の見直し等も視野に入れて、災害対応方針の決定手順や、それぞれの役割が明確に定められるよう、組織体制を構築してください。 - オフサイトセンター機能の在り方
オフサイトセンターについては、合同対策協議会等の役割や、その参集範囲を明確にしてください。
- 複合災害に対応する組織体制の構築
- 安定ヨウ素剤の配付、服用等
- 安定ヨウ素剤の配付、服用
安定ヨウ素剤の迅速な服用のためには、各家庭、学校、事業所等への事前配付や迅速な服用が必要と考えられますので、現行の法制度を見直してください。
さらに、事前の問診体制の整備など、住民が安心して安定ヨウ素剤を服用できるよう、万全の体制を整備してください。 - 安定ヨウ素剤に係る指揮系統
安定ヨウ素剤の配付、服用については、誰からどのような方法で、どこの自治体に連絡があるのか、さらに避難住民に対し、どの時点にどのような方法で指示するのか、国から住民に至るまでの指揮系統を速やかに定めてください。
- 安定ヨウ素剤の配付、服用
- 屋内退避等の状況下での災害対応
屋内退避等が必要な状況において、民間事業者(道路復旧業務従事者、看護師等)、防災関係機関(自衛隊員等)、自治体職員等は、どのように災害対応を行うべきか、労働法制等の見直しを含めて速やかに考え方を定めてください。
併せて、指揮、責任、賠償等に係る法制度を整備してください。 - 避難困難者への対応
- 福祉施設、病院等の防護対策
施設入所者、入院患者等は迅速な避難が困難なため、福祉施設、病院等の放射線防護措置の事業化を進めてください。 - 屋内退避施設の整備
複合災害時等には、健常者でも避難が困難となることが想定されるため、堅固な屋内退避施設(シェルター)の整備の考え方を明確にしてください。 - 物資供給等の支援体制の整備
食糧をはじめとする物資供給や施設環境の整備など、避難困難者を支援する体制を整備してください。
- 福祉施設、病院等の防護対策
- 防護対策に要する財源措置
実効性のある防災体制を構築するためには、上記のほか、次のような対策が必要です。現在の交付金等の財源措置では十分な対応ができませんので、必要な財源措置を行ってください。- 災害対応に当たる民間事業者等向けの防災資機材等の整備
- 住民向けの防護マスク(PAZ用)、簡易マスク(UPZ・PPA用)等の整備
- 広域に及ぶ複数施設間の通信回線を含む通信情報伝達システムの整備
- モニタリングポストの広域的なきめ細かい配置
- 被ばく医療機関設備の充実
- 防護機能を有する搬送車両の整備
- 住民避難や初動対応を円滑に実施するための道路の整備
- 自治体庁舎の緊急時の移転に係る検討や計画の策定
- 防災対応の検討に際しての地元自治体の意見
上記の事項を含め、原子力規制委員会においては、住民等の避難対応を検討するに際し、実際に住民避難等の対応を行うこととなる地元自治体の事情をよく理解している者を検討に加えてください。
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