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平成27年度『新潟県建設業新分野進出優良事業表彰式』を開催し、株式会社笠原建設、株式会社土佐工務店が表彰されました。
県では、建設業から新分野に進出し、他の模範となる優れた成果を収めている事業を広く情報発信することにより、企業の新分野への進出意欲を喚起し、本県地域経済の活性化及び雇用の維持・安定を図るため、平成25年度に『新潟県建設業新分野進出優良事業表彰』を創設しました。
今年度の表彰式を平成28年1月28日(木曜日)に県庁で開催しましたので、表彰式の様子と受賞事業を紹介します。
記念撮影の様子:株式会社笠原建設、株式会社土佐工務店の出席者 および高橋新潟県土木部長
受賞企業・受賞事業の紹介
応募のあった事業について、有識者で構成する選定委員会において、
- 雇用の創出効果
- 経営資源の活用状況
- 新規性又は独創性
- 継続性又は将来性
- 地域貢献性」の5つの着眼点により厳正なる審査をした結果、次の事業が表彰対象として選定されました。
受賞企業の紹介 【株式会社笠原建設】
株式会社笠原建設は大正2年に旧能生町、現在の糸魚川市で創業され、昭和33年に株式会社笠原組となり、昭和43年に株式会社笠原建設に商号変更しました。公共・民間発注の、土木・建築工事、および除雪業務、災害対応など維持管理業務に実績があります。また、創業以来一貫して「地域社会に貢献」を経営理念として、住民が安心して住める環境を目指し取組んでいます。
株式会社笠原建設のホームページはこちら。<外部リンク>
受賞事業の紹介【木材事業(間伐事業・木製品製造事業)】
鈴木代表取締役をはじめとする、株式会社笠原建設の出席者および高橋新潟県土木部長
本事業は平成23年に、間伐による山林活性化および県産杉材の高付加価値化を図るため、社有の杉林に整備用の作業道を設置することから事業が開始されました。会社の人材や建設機械など、経営資源の有効活用をしながら事業を行っています。
主な商品として、間伐した杉材を使用した「越後香素杉」という、高付加価値の住宅内装製品を製造販売しています。従来の高温での木材乾燥方法では水分と共に油性成分も流出してしまいますが、「愛工房」という超低温乾燥機で乾燥させる事により、水分だけを除去することが出来るため、杉材が本来保有する「色」「艶」「香り」などの価値を最大限に引き出すことができます。
また、製材を地元製材所に依頼し、地元工務店を中心に販売を行って地産地消に取り組んだり、地元の保育園児の物作り体験や、愛工房の見学会を開催するなどして、地域社会にも貢献しています。
株式会社笠原建設所有林での作業道設置
木材事業のホームページはこちら。<外部リンク>
有識者による選定委員の講評は次のとおりです。
超低温木材乾燥装置「愛工房」で乾燥中の杉材
経営資源の有効活用
地元での建設・土木業の永年のノウハウをもとに、地域資源である杉材を有効活用し、地球環境にも配慮している。また、不整地運搬車をフォワーダ仕様に改造したり、バックホウやトラック、フォークリフトなどの機械を有効利用している。そのために、建設機械のオペレーターや作業員を、事前に繰り返し教育・訓練しながら新分野に進出している。
新規性・独創性
強みとして、全国に10基しかない超低温木材乾燥機を保有している。それによる新たな超低温乾燥方法により環境にやさしく、さらに付加価値の高い木材に仕上げている。
継続性・将来性
以下の点を改善することにより、今後の売上高増加や利益確保が期待される。
- 一般県産材や、越後杉との差別化を図る。
- 「香素杉」のブランド化と、キャッチコピー(フレーズ)の導入を図る。Btob企業、とりわけ素材製造でもブランディング意識が高まってきており、その意識を持ち、販路拡大の一助とする。
- 研究機関との協働により効能、防カビ性等のエビデンスを明確に把握し、品質証明として商品の梱包資材等に情報を明記し添付する。
- 商品力の明確化(吸湿性、香、体感温度、肌触り等)と、対象顧客へのアプローチ方法を検討する。
- 施主等、ユーザーニーズの確認調査を実施する。
地域貢献性
環境配慮に当たっては、木材の加工過程において、優れた取り組みがなされている。生物多様性が謳われる今、社有林でも、その配慮に努め、地域にその啓発を展開する事が期待される。それが戦略的Csr(企業の社会的責任からの取り組み)につながり、企業価値向上に結びつくと思われる。また、当該杉材が、生活住環境の改善や、子供達への教育にも役立てられる事が期待される。商品開発を行っており評価できる。
地域に対する貢献意識、人との絆を大切にする社長の理念に基づいて、浮沈の激しい建設業の分野にあって明るい話題を提供している。
能生白山神社宝物殿の内装材全てに使用された越後香素杉
受賞企業の紹介【株式会社土佐工務店】
株式会社土佐工務店は、昭和47年に旧西山町、現在の柏崎市で創業され、その後、順調に業績を重ね、昭和55年に株式会社になりました。現在まで、土木、建築工事を中心に数多くの施工実績があります。また、「信用・信頼・安心」を基本理念とし、事業を通じて地域社会に貢献する建設企業として活躍しています。
土佐代表取締役社長をはじめとする、株式会社土佐工務店の出席者および高橋新潟県土木部長
受賞事業の紹介【わさび栽培加工販売および観光農園事業】
本事業は、自社保有の土地および水源が、わさび栽培に適していることに着目され、平成23年に、栽培ハウス1棟を建設し事業へ着手、平成25年に観光農園の「石地わさび園」をオープンしています。
海辺でのわさび栽培および海の見えるわさび園としての意外性、独創性が話題を呼び、オープン以来、来場者および売上とも毎年増加を続けています。また、釣り堀などの施設も併設され、六次産業化のモデルとして注目されています。
主力商品であるわさびは、4棟ある栽培ハウスで年間約15,000本程度を生産され、本生わさびとして販売するほか、わさび丼や、わさびを使用したコロッケ、ソフトクリーム、調味料など積極的に新商品を開発され、好評を得ています。
また、地元大学との連携による商品開発や共同研究、わさび園従業員の地元での新規雇用、そして柏崎市ふるさと納税の返礼品としても取り扱われているなど、地域活性化に貢献しています。
主な商品
- 本生わさび(茎・葉など)
- 園内飲食メニュー(わさび丼、わさびコロッケ、わさびソフトクリームなど)
- わさび加工品(わさび漬け、わさび塩、わさびだれなど)
- その他(石地わさびそばなど)
石地わさび園の店舗
有識者による選定委員の講評は次のとおりです。
湧水を利用した、ビニールハウスでのわさび栽培の様子
雇用の創出効果
わさびの栽培、加工、販売まで付加価値を高め、地元から多くの新規雇用を創出する六次産業化の取り組みであり、評価できる。
経営資源の有効活用
自社の遊休地と、ミネラル豊富な湧水および自然環境を有効活用している。
新規性・独創性
巡ってきたチャンスを着実に活かしながら事業を展開していることは起業精神に満ち、他企業に波及効果を及ぼしうる。建設企業の新分野進出事例として、標準的なモデルである。わさび栽培の取り巻く環境すべてを、新たな創造につなげることが期待される。
継続性・将来性
規模的にはあまり拡大せずに地域の特産品として住み分けていくのがベターと考えられるが、以下の点を改善することにより、今後の売上高増加や利益確保が期待される。
- ジュレ状調味料等加工品の商品開発を行う。
- 店頭販売商品のバリエーションを拡大する。
- 冬期間における名物料理の提供により、集客拡大を目指す。
- 土産用として商品化し、空港売店等で販売する。また、商品をセット化する。
- 飲食業、流通、料理家とのコラボレーションを進め、需要拡大と安定を目指す。
地域貢献性
海岸沿いでのわさび栽培という、誰もが想定しえない場所での事業進出であり、地域への貢献は大きい。また、隣接する海水浴場やゴルフ場、大崎雪割草の里、温泉施設及び県、市、商工会、観光協会と連携して取り組んでいる。
大学との技術連携による事業の優位性の確立、さらには教育機会の提供により、地域起業の魅力認識に努め、事業意欲ある若者の地域への定着の一助となることが期待される。
本生わさびをはじめ、わさび漬けなどわさび加工品等の商品たち
石地わさび園のホームページはこちら<外部リンク>