このページの先頭です メニューをとばして、このページの本文へ
新潟県ホーム の中の商工業・産業立地の中の金物だけでない!三条は、日本唯一の芸術的墨壺のまち
本文はここから

金物だけでない!三条は、日本唯一の芸術的墨壺のまち

2017年02月27日
職人歴55年の「壺静たまき工房」田巻勇一さん

 「墨壺」という大工道具をご存知でしょうか?

 墨壺とは、大工が家を建てる時などにノコギリで柱や板をまっすぐ切るための線を引く道具です。
 最近では、工場で自動的にカットした木材を使って家を建てる工法が多くなったこともあって、墨壺を目にする機会はほとんどないと思います。若い世代では、テープカッターと勘違いする人もいるそうです。

 今では、墨壺の需要が少なくなってしまい、凝った彫刻を施した芸術的墨壺の職人は、全国でも三条市内の4人だけになってしまいました。
 
 墨壺職人の田巻勇一さんから、墨壺の歴史や墨壺作りのこだわりなどについてお話を伺いました。

職人歴55年の「壺静たまき工房」田巻勇一さん

墨壺の発祥地はエジプト

Q 墨壺のルーツはどこですか?
A 墨をつけた縄で直線をひいた古代エジプトの墨縄がルーツです。その後、中国で糸を巻く部品と墨をつける壺とが1つになった道具が発明され、日本に伝来しました。

Q 芸術的な墨壺を作る職人が現れたのはいつ頃ですか?
A 墨壺は大工が自分で作っていた道具です。墨壺を見ると大工の腕前が分かりました。その内、凝った彫刻を施した墨壺のニーズが高まり、江戸時代末期から明治時代頃に専門の職人が出てきました。大正から昭和にかけて、号を「坪清」という職人が東京から三条へ来たことを1つの契機に、最盛期には全国の8割以上を作る産地になりました。
 それまでの三条は実用品のみでしたが、「坪清」は鶴や亀の彫刻の技術があり、それから三条でも彫刻墨壺の技術が広まりました。

Q 三条市が一大産地になった理由は?
A 昔は東京が一大産地でしたが、三条では機械化が進んだので、全国一の生産地となりました。今では、住宅の建築工法の変化やプラスチック製の墨壺の普及などで、残念ながら芸術的な彫刻がある墨壺の需要はかなり減っています。

Q どのような人が購入しますか?
A 宮大工からの注文が中心です。自分が使うだけでなく、弟子が自立するときなどのプレゼントとして買う人もいます。また、家に飾るために購入する一般の方もいます。
張った糸をつまんで放すと、木材に直線を引くことができます。
木目も美しい鶴亀の墨壺【田巻勇一氏作】

張った糸をつまんで放すと、木材に直線を引くことができます。

木目も美しい鶴亀の墨壺【田巻勇一氏作】

鶴、亀、龍を彫った墨壺。右側には子亀もいます。【有限会社坪源所蔵。真保成孝氏作】
数百年川底に埋まっていた神代欅(ジンダイケヤキ)を使った墨壺【マルナオ株式会社所蔵。福田直悦氏作】

鶴、亀、龍を彫った墨壺。右側には子亀もいます。【有限会社坪源所蔵。真保成孝氏作】

数百年川底に埋まっていた神代欅(ジンダイケヤキ)を使った墨壺【マルナオ株式会社所蔵。福田直悦氏作】

彫刻のデザインは、池にちなんだ動物

Q 墨壺の材料は何ですか?
A 木目の美しさや耐水性があることから、ケヤキが主な材料ですが、紫檀(したん)や黒檀(こくたん)もあります。時々、自分の家の床柱から作ってほしいとの依頼もあります。一度、鉄刀木(たがやさん)という木で墨壺を作ったら、本当に硬い材木で、道具が欠けてしまったことがありました。

Q いろいろな動物の彫刻がありますが、決まったモチーフはありますか?
A 墨をためるところを「池」と言います。そのため、龍や鯉、亀など池にちなんだ彫刻が多いです。変わったところでは、四神(青龍、朱雀、玄武、白虎)や、河童、蛇、鬼のほか、猿や羊など自分の干支にちなんだ注文もあります。四神は本当に大変で、1か月半、他の仕事はせずに専念しました。 三すくみ(蛇、蛙、なめくじ)を作ったことがありますが、今までやった事がない作品は、デザインが決まるまで、かなり思い悩みます。
東大寺南大門の梁の上にあった墨壺を見て、作った墨壺【田巻勇一氏作】
三すくみを彫った墨壺【田巻勇一氏作】

東大寺南大門の梁の上にあった墨壺を見て、作った墨壺【田巻勇一氏作】

三すくみを彫った墨壺【田巻勇一氏作】

活き活きとした表情と実用性に「こだわり」

Q 墨壺はどこでも同じような形ですか?
A 関東式の墨壺は、廻手(かえで)というハンドルが付いていますが、関西式はついていません。また、「新若葉」という若葉のようなフォルムの墨壺が一般的ですが、もっと丸みを帯びた「広島形」や、鉄工の仕事で使う「角壺」という四角形の墨壺などがあります。
 ちなみに、柱や屋外用に使う墨壺は黒い墨を使い、部屋の中に使うものは赤い墨を使います。一般に屋内用は、屋外用より小さ目です。

Q 職人ならではの「こだわり」をお聞かせください。
A 墨壺で「顔」と言われる動物などの表情にこだわっています。やさしい表情よりも活き活きとした表情を出しています。その他、今では仕事で墨壺を使う人は少なくなりましたが、私としては、実際に使われることにこだわり、手になじみ使いやすいものを考えて、墨壺を作っています。 
蛇ににらまれ驚いている蛙の顔が印象的です【田巻勇一氏作】
酒樽の酒を飲もうとする猿。ユニークなデザインです【田巻勇一氏作】

蛇ににらまれ驚いている蛙の顔が印象的です【田巻勇一氏作】

酒樽の酒を飲もうとする猿。ユニークなデザインです【田巻勇一氏作】

龍をかたどった墨壺【田巻勇一氏作】
愛嬌のある龍の顔です。【田巻勇一氏作】

龍をかたどった墨壺【田巻勇一氏作】

愛嬌のある龍の顔です。【田巻勇一氏作】

「坪清」作の墨壺。実用品なので凝った彫刻はありません。室内用なので赤い墨です。
同じく「坪清」作の「糸巻」です。

「坪清」作の墨壺。実用品なので凝った彫刻はありません。室内用なので赤い墨です。

同じく「坪清」作の「糸車」です。

三条地域振興局企画振興部からのお願い

もし、芸術的な彫刻を彫った「坪清」作の墨壺をお持ちの方がいましたら、教えてください。連絡先は下のとおりです。