新潟県ホーム の中の農林水産業の中の 島民クローズアップ・インタビュー(テーマ:“育む(はぐくむ)”)vol.3

  島民クローズアップ・インタビュー(テーマ:“育む(はぐくむ)”)vol.3

2008年09月21日
 島内で頑張っている人を紹介する「島民クローズアップ・インタビュー」をお届けします。
 毎月、佐渡地域振興局の各所属や事務所が「育む(はぐくむ)」というテーマをもとにふさわしい方を訪ね、インタビューを実施します。
※インタビューの記事は、毎月21日に更新します。

 第3回目は、トキの田んぼを守る会会長の斎藤真一郎さんを訪問しました。
 斎藤さんは、無農薬・無化学肥料栽培等の環境に優しい農業に取り組み、トキや様々な小さな生きものたちが暮らせる田んぼを育んでいらっしゃいます。
 また、県内で唯一、柿の栽培で新潟県特別栽培農産物認証制度の認証を受けている方でもあります。
 佐渡の環境や消費者に対する思いなどを語っていただきました。

Q1 斎藤さんが栽培している品目と栽培方法をお聞かせ下さい。

 米を15ha、柿を160a、いちごを17a、りんごを60a、ネクタリン・桃を合わせて50a栽培しています。
 栽培方法については、減農薬・減化学肥料栽培や、無農薬・無化学肥料栽培を行っています。
 米ぬかや有機肥料を利用して栽培していますが、堆肥については、佐渡の畜産が少なく、手に入りにくくなっています。また、島内の有機資源の循環の拡大が今後必要になると思います。

Q2 環境に優しい農業に取り組もうと考えたきっかけは何ですか?また取り組み始めたのはいつ頃ですか?

 最初のきっかけは、平成12年頃、旧新穂村でトキの野生復帰の話が出てきたことです。餌場を確保する必要があることから、環境に優しい田んぼづくりに取り組む人を募集しており、そこに手をあげました。
 同じ時期に柿についても取り組み始め、少し遅れていちごなど他の品目についても取り組み始めました。

Q3 斎藤さんが考える環境に優しい農業とはどんなものですか?

 トキの野生復帰がきっかけで取り組み始めた環境に優しい農業ですが、自分に子どもができてからは、「安全・安心」なものを食べさせてあげたいと思うようになりました。また、取り組みを進める中で消費者の方々と出会い、自分が作った農産物を食べる全ての人のためにも、家族と同じ気持ちで「安全・安心」な農産物を作りたいと考えるようになりました。
 他にも、農薬の使用量を減らすことによって作業中に体にかかってしまう農薬の量が減り、農産物を生産している自分たちにも優しい農業になっているといえると思います。

Q4 それぞれの品目で、通常の農業と比較して特に大変な点を教えてください。

 全ての作物でいえることですが、農薬を減らすことによって雑草や虫が多く発生するようになり、その分田んぼや畑に足を運ばなければならい回数が多くなりますし、草取りなどは通常の農業と比較すると重労働になります。
 また、柿やいちごなどは特に見た目が重視されるため、畑に多く足を運び、見て回らなくてはなりません。

Q5 柿で新潟県特別栽培農産物の認証を受けているのは斎藤さんだけとのことですが、他の作物に比べて特に導入が難しい要因がありましたら、教えてください。

 柿を出荷する際、選果場でサイズ、色などによって選別していますが、栽培方法の違う柿を選別する場合、いったん機械を停止し、通常の栽培方法で生産した柿とは別に作業を行わなくてはなりません。
 その機械の切り替え作業等で、1日当たり約100万円の費用がかかってしまうため、現在は選果場に渋抜きの作業だけをお願いし、選別・販売は自分で行っています。
 栽培方法の違う柿を受け入れられる流通経路が整い、消費者の方が関心、理解を示してくれる環境が整わないと、なかなか取り組みは広がっていかないのではないかと思います。

Q6 環境に優しい農業を導入したことによるメリットを教えてください。

 田んぼに小さな生きものが増えたことによって、「いろんな生きものが生きられる環境で作られた米である」という安心につながっていると思います。
 消費者の方と一緒に田んぼの生きもの調査を行い、実際に目で見て安心を実感してもらう中で、「斎藤さんの米や柿を食べたい」と言ってくれる方が増えてきました。

Q7 現在、トキの放鳥と関連の深い農作物として最も注目されているのは米だと思いますが、他の作物について、環境に優しい農業に取り組むことによるトキ放鳥に関するメリットがあれば教えてください。

 柿やいちごでの取り組みによるトキに関するのメリットは、農薬の散布回数が少なくなることで地域の環境を良くすることにつながる点ではないかと思います。
 現在は米での取り組みが多数を占めますが、今後トキや環境に優しくしたいという考えが広まり、他の作物での取り組みにつながっていけば、結果的に地域全体の環境が良くなっていくのではないかと思います。

Q8 斉藤さんは現在、トキの田んぼを守る会の会長として活動しておられますが、他の生産者、消費者と交流する中で、どんなことを感じていますか?

 トキをキーワードに環境に優しい農業を行うことで、いろんな人との交流ができたこと自体が、自分の中で大きな財産になっていると感じています。
 特に、会員の方と一緒に、田んぼの草取りや生きもの調査を行うことによって、消費者の方が自分の食べる米が作られている田んぼに入り、生産者と消費者がお互いに顔を見ることができるのはとても良いことだと感じています。
 また、生産者と消費者の両方の立場で、農業を通してトキの放鳥を応援したいという人が増えてきたように感じています。

Q9 環境に優しい農業を継続する秘訣を教えてください。

 農業「経営」をしていますので、お金も大事ですが、そればかりを考えていては続けていけません。
 消費者に安全・安心な農産物を提供したいという思い、いろんな生きものが生きていける環境を作っていきたいという思いを持って農業をしていく必要があると感じています。

Q10 今後新たに取り組んでみたいと考えていることや目標があれば教えてください。

 お金のことばかりを考えていてはいけませんが、取り組む以上は経営として成り立つ農業をしたいと考えています。そのために安全・安心と美味しさを両立させた農産物を作り、コストに見合った価格で販売できるよう、環境経済農業を目指したいと思います。
 トキが生きていける環境は、人間にとっても住みやすい環境ですので、以前のように米を作る場所に他の生きものはいなくても良いという考え方ではなく、田んぼにトキや他の生きものがいても良いじゃないかという大らかな気持ちを持てるようにしたいと思っています。

Q11 最後に、このインタビュー記事を見ている方に一言メッセージをお願いします。

 間近に迫ったトキの放鳥により、佐渡の環境や田んぼが様々な生きものにとって住みやすいものであるかどうかが試される時が来たのではないでしょうか。県民の方からもっと農業に目を向けてもらい、お互いに支え合えるような農業を行う中で、農業と環境は密接に関係し、互いに影響を及ぼしあっていることを理解してもらえればと思っています。


☆インタビュアーから☆

 近年、食品の産地偽装や事故米の問題等を受け、食の安全・安心に対する関心が高まっています。
 また、トキの放鳥を間近にひかえ、環境に優しい農業に関心を持つ人が増えてきています。
 トキや小さな生きものたちが暮らせる環境をいつまでも守っていけるよう、より多くの方から環境に優しい農業や農産物に関心を持っていただき、それぞれの立場でできる形で応援していただきたいと思っています。

農林水産振興部 農業企画課 徳山