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ヒノキ・アテビの漏脂病
漏脂病とは?
ヒノキやアテビ(標準和名はヒノキアスナロ)はどちらもヒノキ科の樹木で、優良な木材がとれるため古くから造林樹種として利用されてきました。
しかし、これらの樹種は、漏脂病と呼ばれる幹の病気を発症することがあります。
漏脂病を発病したアテビ
漏脂病は、植栽して15年程たった頃から症状が見られるようになります。
一般的には、枝の基部や樹皮の傷口等から樹脂を流出し、激しい場合には幹の表面を幾筋もの樹脂が流れ落ちます(画像参照)。
樹脂の流出だけであれば材に影響を与えませんが、時に樹脂の流出口周辺の形成層(樹木が生長する部分)が壊死し、次第に縦長の凹みが生じ、幹が変形したり材がむき出しになったりします。
やがて、樹皮の剥がれた部分から木材腐朽菌が侵入し、材の変色や腐朽を引き起こして木材の利用価値を無くしてしまいます。
漏脂病を発病したアテビ林
ヒノキの漏脂病は、豪雪等により枝や梢端が引っ張られた際に細かな傷が生じ、そこから原因菌が侵入することで発生します。
これは、ヒノキが元々西日本に自然分布する樹木であり、雪にはそれほど強くないことが一因としてあげられます。
なお、漏脂病の原因菌がヒノキの幹に侵入してから発病するには数年の時間を要するため、豪雪の翌年に被害が発生しなかったといって安心できるものではありません。
アテビの漏脂病については、調査・研究が始まったばかりであり発生メカニズムは特定されていませんが、ヒノキの場合とは異なる可能性があります。
漏脂病を防ぐには?
はかま(枝座)を残して枝打ちをした事例
漏脂病を防止するには、以下の対策を心がける必要があります。
- 冬期の積雪深が1mを超える林地にはヒノキの造林は行わない。
- ヒノキの場合、土壌が肥沃で水分が多いスギの植栽適地は避ける。
- アテビの場合、植栽する苗木は漏脂病を発病した林地で生産された取り木苗・挿し木苗の使用を避ける。
- 造林地周辺の雑木等は残し、林内に寒風が吹き込まないようにする。
- 間伐は1回で伐採する本数は弱度にとどめ、数年おきにこまめに実施する。
- 枝打ちは、「はかま」(枝座とも呼ばれる枝の根元のふくらんだ部分)は残して枝打ちの断面を小さくする(画像参照)。
- 枝打ちは、枝が太くなる前にこまめに実施する。