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【佐渡】松くい虫被害の現状と対策
佐渡島の松くい虫被害の現状
佐渡島に松くい虫被害が侵入したのは昭和61年のことで、平成6年には被害のピークを迎えました。その後は徐々に減少を続け、平成16年度以降は被害量が大きく減少し、終息傾向を示しています。
佐渡島の松くい虫被害対策
佐渡島内では、健全なマツを守るための予防対策と、被害を受けて枯れたマツの駆除対策を実施しています。
1 予防対策
(1)無人ヘリ散布
軽トラックに乗せることのできるラジコンヘリを用いて薬剤散布を行います。操縦者は高所作業車に乗り、マツの梢を確認しながら無人ヘリを操作します。
佐渡島では、佐渡金山周辺(相川地区)、八幡(佐和田地区)で実施しています。
(2)地上散布
動力噴霧器で松の梢端へ薬剤を噴射します。八幡(佐和田地区)、長石(真野地区)等で実施しています。
(3)樹幹注入
マツの幹に薬剤を注入する方法で、上新穂(新穂地区)、長石(真野地区)等の各地域で実施しています。
2 駆除対策
被害を受けて枯れたマツを切り倒し、生分解性のシートで丸太を覆い、薬剤でくん蒸することで材の中にいるムシを殺虫します。
佐渡島内の松くい虫被害が発生した地域で、適宜実施しています。
3 その他対策
新潟県森林研究所では、長年松くい虫被害への抵抗性を有するマツの研究をしており、平成18年度から「にいがた千年松」という名称で抵抗性アカマツの流通が開始されました。
松くい虫被害の発生メカニズム
松くい虫被害は、正式には「マツ材線虫病」と呼ばれる伝染病です。
この伝染病は、マツノザイセンチュウとマツノマダラカミキリが協力することで、被害が拡大します。
(1)マツノマダラカミキリの羽化・脱出
枯れたマツの材内で越冬したマツノマダラカミキリの幼虫は、5月頃から蛹となり、6月頃に羽化します。
このとき、マツノザイセンチュウはカミキリムシの周囲に集まり、カミキリムシの気門(きもん:呼吸するための孔)からカミキリムシの体内に侵入します。マツノマダラカミキリの成虫は、マツノザイセンチュウを保持して、被害木から脱出します。
(2)マツノザイセンチュウの侵入
羽化・脱出したマツノマダラカミキリは、健全なマツに移動し(マツノマダラカミキリの移動能力は2キロメートル程)、若い枝葉を食害します。
このとき、マツノザイセンチュウは、カミキリムシの体を離れ、カミキリムシの噛み跡からマツの材内に侵入します。
(3)マツノザイセンチュウの増殖
マツの材内へと侵入したマツノザイセンチュウは、マツの内部で爆発的に増殖し、マツの内部で樹脂道や形成層帯などの細胞組織を変性・破壊します。
このため、マツは水分を吸い上げることができなくなり(通水障害)、衰弱・枯死します。
(4)マツノマダラカミキリの産卵
衰弱・枯死するマツからは、エタノールとα-ピネンと呼ばれる化学物質が発生します。マツノマダラカミキリは、この化学物質が発生するマツを産卵に適した木と認識し、引き寄せられます。
なお、マツノマダラカミキリはマツの樹皮に噛み傷をつけ、そこに産卵します。
(5)マツノマダラカミキリの幼虫の成長
孵化したマツノマダラカミキリの幼虫は、マツの樹皮下で柔らかい皮(内樹皮)を食べながら3回の脱皮を経て成長し、10月頃に材の内部に穿入し、冬に備えます。
注:マツノマダラカミキリは通常一年一化(1年で卵から親になること)ですが、寒冷地等では二年一化(2年で卵から親になること)になることもあります。
(1)に戻り、次の年のサイクルが始まります。