2期生がみんなの期待を背負って、飛翔のときを迎えました。
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9月29日(火)、佐渡市の鳥で国の特別天然記念物「トキ」の自然放鳥が行われました。今回の放鳥は、昨年の9月25日から約1年ぶりとなる2回目です。
前夜に雨が降り、天候が少し心配されましたが、うす曇りではありますがさわやかな秋空の中、放鳥日を迎えました。
今回放鳥されるのは、ほとんどが順化ケージで訓練を積んだ「2期生」20羽(オス8羽、メス12羽)です。今回は、前回の放鳥に比べてメスの数を多くし、メスが佐渡島内に残る可能性を高めています。
また、前回の放鳥の結果、メスがすべて本州に移動して所在を把握するのが難しくなったことを踏まえ、今回はメスを中心にGPS送信器を装着しました。さらに、アニマルマーカーによる着色は、前回よりも着色面積を小さくし、目立たないようにしています。
20羽の中には、繁殖を経験しているつがいが入っていることも、今回の放鳥の特徴です。
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放鳥を間近に控えたトキたち(大型モニター画像より)
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「ソフトリリース」方式採用。静かに温かく見守ります。
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放鳥用の仮設ケージから自然に飛び立つのを見守る「ソフトリリース」と呼ばれる方法で行われる今回の放鳥。 昨年の放鳥は、一斉に箱から外に出す方法を採用し、大勢の見物客が見守る中行われました。 しかし、結果としてトキがパニックを起こし、群れを形成するまでには至らなかったことから、今回はこの方法が採用されました。
見物客は、トキが驚かないように、放鳥用ケージから遠く離れた所で見守ります。 また、放鳥会場から2㎞ほど離れたトキ交流会館と、佐渡市役所の隣の金井コミュニティーセンターには大型モニターが設けられ、ライブ映像で放鳥の様子を見ることができました。
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大型モニターで放鳥の様子を見守る人たち
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「外の世界を見てきてごらん。」手塩にかけたトキたちが一羽、また一羽と飛び立ちます。
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午前10時20分。鈴木環境省自然環境局長や泉田新潟県知事、髙野佐渡市長らによるテープカットが行われ、挨拶をした新潟県知事からは「トキをきっかけに、生物の暮らしと人間の暮らしを調和させていくためには何が大切か、考える必要がある」というメッセージがありました。
そのあとは、いよいよ仮設ケージの入口が開けられます。 ゆっくりゆっくりと開いていくネット。トキたちは、その様子を止まり木に止まって、静かに見守っています。 これまで自分たちが暮らしてきた環境よりも、はるかに広い美しい世界、そして自分の力で生き抜かなければならない厳しい世界が待っていることをトキたちも悟っているかのような雰囲気です。
新しい世界に対して、一抹の不安があるのでしょうか。ネットが開いても、なかなか動こうとしないトキたちの姿がありました。
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ネットが開きました。(大型モニター画像より)
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そんな仲間たちの先陣を切って、10時45分、1羽のオスと見られるトキが外へと羽ばたいていきました。
その瞬間、大きな拍手と歓声が沸き起こり、辺りは温かい雰囲気に包まれました。 トップバッターを務めた勇気あるトキは、仮設ケージの周りを旋回したあと、近くの山あいの空で、翼を外の空気に慣れさせるかのように、たっぷりとはためかせていました。
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勇気あるトップバッター。たくましく飛んでいきました。(大型モニター画像より)
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そして午後1時すぎ、さらにもう1羽のオスと見られるトキが外へと羽ばたきました。
放鳥初日のこの日は、2羽のみが飛び立ちました。午後4時45分には、トキがタヌキなどの天敵に襲われないようにネットが閉じられ、また翌朝の放鳥に備えます。
それぞれのペースに合わせて、飛び立ちのときを選んでいるようです。
放鳥2日目。朝5時30分すぎに再びネットが開けられました。
環境省によると、午前に4羽が、午後に7羽が飛び立ちました。午後の7羽のうち、4羽が一緒に飛び立つ様子も見られました。
今後は、すべてのトキが飛び立つのを見守り、群れとつがいの形成や新たな命が育まれるのを期待して、静かに観察が行われることとなります。
「朱鷺と暮らす郷」米の稲刈りと生きもの調査が行われました。
この日は、11時すぎから関連イベントとして佐渡市朱鷺認証米である「朱鷺と暮らす郷」の刈り取りも行われました。このお米は、人とトキが健やかに暮らしていける環境をつくるため、化学肥料と農薬を通常の8割削減して栽培したものです。
泉田知事や髙野市長らが蓑(みの)と笠をつけ、地元農家の方々のアドバイスを受けながら刈り取り、束にして重ねていきました。
さらに、刈り取りを行った田んぼの近くの江(水路)では、どんな生き物がすんでいるかを調べる「生きもの調査」が行われました。調査の結果、大きなドジョウやゲンゴロウ、また県内でも本土側では見ることが難しくなった「ヨシノボリ」というハゼ科の魚も見ることができました。
刈り取り終了後、記念撮影をする関係者の皆さん
果たして、どんな生き物がいるでしょうか。
「トキと翔ける島づくりフォーラム」が開催されました。
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午後からは、放鳥を記念し、新穂地区の「佐渡市トキのむら元気館」にて「トキと翔ける島づくりフォーラム」が開催されました。
「佐渡トキ環境親善大使」の任命を受けた歌手の加藤登紀子さんが「トキと生きるしあわせについて」という題目で講演を行いました。 加藤さんは、国連環境計画の親善特使にも任命されており、様々な環境保護活動を行っています。
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「佐渡トキ環境親善大使」の任命を受ける加藤登紀子さん
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加藤さんからは、「昨年の放鳥から、トキが大きなニュースになっている。すべてのメスが海を渡ってしまい、心配もあるだろうが、トキがいることで島の人たちの心が一つになるとともに、心も豊かになっていると思う」というメッセージがありました。
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お客さんをぐっと話に引き込む力強い語り口が印象的です。
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また、加藤さんをはじめ、髙野市長や各界の有識者がパネリストとなり、「トキと共に生きる島づくり」という議題でパネルディスカッションが行われました。
コーディネーターとパネリストは、以下の方々です。
【コーディネーター】 NPO生物多様性農業支援センター理事長 原 耕造 氏
【パネリスト】 歌手 加藤 登紀子 氏 山階鳥類研究所所長 山岸 哲 氏 恩賜上野動物園園長 小宮 輝之 氏 (株)イトーヨーカ堂食品事業部加工食品部 シニアマーチャンダイザー 吉田 隆至 氏 JA佐渡代表理事理事長 板垣 徹 氏 佐渡市長 髙野 康一郎 氏
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様々な分野の方々が興味深い議論を展開しました。
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参考になる様々な意見に、お客さんも大きくうなずきます。
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パネルディスカッションの中では、「トキという佐渡の“スター”を通して、生物多様性を考え直す良い機会である」という話や、「放鳥を機に、地域の人の意識が大きく変わり、農業が花形産業になった。幸せを運ぶトキに感謝したい」というトキが担う大きな役割を称える声がありました。
また、それと同時に「放鳥の成果は、10年くらいのスパンを持って見守っていく必要がある」というアドバイスや「佐渡はトキや金山というイメージはあるが、“自然と共生する島”ということは意外と知られていないのではないか」という指摘がありました。
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コーディネーターの原氏
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また、加藤さんは、トキとの共生のルールに触れ、「トキに餌付けをしないようにしましょう」という項目が一番優れていると指摘。
「餌を与えることができれば、人間側も心配が減るし、トキにとっても一時的にはハッピーかもしれない。でも、トキが自立できる環境は、人間にとってもよい環境であるということを考えると、これは正しい。人間の子どもがきちんと自立できるように、親が甘やかしすぎず、環境を整えてあげることが必要というところに通じるかもしれない。」と話しました。
トキと環境のことを深く考えることができた一日でした。
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髙野市長は、「環境の島”を唱えることはすべての産業の後押しになると信じている。」と話していました。
会場は、用意した椅子が足りないほどの大勢のお客さんで賑わい、話に熱心に耳を傾けていました。 その様子に加藤さんは、「今日のお客さんは、的確なポイントで拍手や笑い、うなずきなどを返してくれる。話していても本当にうれしい」と会場のお客さんに感謝の言葉を述べていました。
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「環境の島」づくりについて語る髙野市長
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フォーラムの最後には、環境省から地元農家の代表の方に「トキ餌場水田認定証」の交付が行われました。トキが飛来した田んぼで収穫された米は「トキ踏んじゃった米」として様々なPRに活用することを検討しているとのことです。
また、パネリストの一員である(株)イトーヨーカ堂からは朱鷺と暮らす郷米「佐渡市トキ環境整備基金」への贈呈が行われました。
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会場はたくさんのお客さんで賑わいました。
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この日は佐渡にとって、昨年の放鳥日に引き続き、環境や生き物との共生を考える大きな節目の日になったことは間違いありません。トキは、佐渡のシンボルであるとともに、私たちに大切なことを考えさせてくれたり、勇気をくれたりする存在でもあります。
昨年放鳥されたトキたちのたくましさは周知のとおりです。今回の2期生たちからは、先輩たちのたくましさを身に付けてもらうことはもちろん、トキ同士一緒に過ごすことのメリットやすばらしさを知ってもらい、ゆくゆくは可愛らしいひな誕生のニュースを届けてほしいですね。
引き続き、トキたちを「そっと温かく」見守っていきましょう。