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農業水利施設の歴史探訪シリーズ vol.6 『石油王のつくった中野1号堤』

2017年01月16日

施設概要 【にいがた農業水利施設百選(整理番号97)】 

 中野1号堤は新潟県の北部に位置する旧朝日村(現村上市)中野地区にあり、地域の農地約50haに送る水を貯める貯水施設(ため池)です。
 1917(大正6)年、当時石油王といわれていた金津村(現新潟市秋葉区)の中野貫一が私財を投じ、原野を開墾、1921(大正10)年にため池の建設を行いました。
 その後、経年によりため池が老朽化し、漏水が著しくなったこと等から1995(平成7)年~1999(平成11)年に県営ため池等整備事業により改修し、現在は安定した用水の供給を行っています。
現在の中野1号堤
(石油王中野貫一)
 中野家は金津村で代々庄屋を務める地主で、貫一の曾祖父は1804(文化1)年に石油の採掘権を買い取り、「泉舎(イズミヤ)」を号していました。貫一は1846(弘化3)年に長男として生まれましたが、14歳で父を亡くし、庄屋とともに「泉舎(イズミヤ)」を引き継ぎました。
 1874(明治6)年に「石油坑法」が公布されると、新潟県庁に石油の試掘を出願、許可を得て自分の所有地に開坑し、石油の産出に成功しました。
 様々な困難を乗り越え、最初の試掘から29年目の1903(明治36)年、初めて商業規模の油田を掘り当てました。その後は日本石油等に次ぐ大産油業者に成長し、明治、大正時代には「石油王」と呼ばれました。

インタビュー協力

本間英三さん(三面川沿岸土地改良区理事長)
川村義明さん(三面川沿岸土地改良区総務課長)
大滝友和さん(元小学校教員)

インタビューの様子

中野地区開墾の歴史

 中野貫一は採油業の他に、国益を考え土地の開発にも力を入れました。
 1913(大正2)年、当時の岩船郡高根村(現村上市朝日中野地域)に原野154haを購入し、開墾しました。中野地区の開墾は江戸時代から、たびたび進められてきましたが成功せず、中野貫一でなんと12人目の開墾者でした。

 1917(大正6)年、最初の開墾者は11名でした。始めの仕事は、山の麓づたいの用水路作りでした。この時、近隣の集落から苦情が出て、水騒動になりましたが、秋に穫れた米を配分するという条件で、何とか納得してもらえました。

岩盤を利用した頭首工(用水路取水口)

 1918(大正7)年7 月、田1.3haに初めて田植えをし、秋には28俵半(1,710kg)の米を収穫することができました。このことで、開墾者一同は大変喜びました。

 田んぼの水源を確保するために、1921(大正10)年から1923(大正12)年にかけて、1号、2号、3号のため池をつくりましたが、地盤が軟弱で大変苦労をしました。泥で足がぬかるので、わらを敷いたり、もみがらをまいたりして足場を作り、もっこ(縄や竹で編んで作った運搬道具)で土を運びました。

ため池造成の様子

 開墾については、全国に先駆けて外国製トラクターの導入等により急速に進み、1921(大正10)年には田約50ha、畑約100haが完了しました。
 昭和60年代には、県営のほ場整備事業が行われ、中野地区は現在のような田へと変わりました。

おわりに

地域の歴史を後世へ引き継ぐ

 集落では、1925(大正14)年、開墾の成功を祈念し中野神社を建立しました。その後の1931(昭和6)年には、それまで中原野と称されていたのが、高根村大字中原字中野となり、新しい地名が誕生しました。その6年後となる1937(昭和12)年には、中野貫一の業績と開墾者たちの努力を伝えるため、神社の前に開墾碑を建立しました。
 2017(平成29)年、中野集落は成立から100年を迎えます。集落では100周年を記念し、記念行事が行われる予定とのことです。

開墾の成功を祈念し建立された中野神社

中野貫一の業績と開墾者たちの努力を伝える開墾碑

取材を終えて

 一面雑木林の原野を開墾した当時の開墾者の苦労は、現代の私たちが想像する以上のものがあったと思います。取材を通して、今日まで続いている営農をこれからも継続させるために、地域の農業水利施設を大切にする重要性を改めて感じました。
 この記事がそのような先人たちの苦労、地域の歴史、農業水利施設の大切さを多くの方々に伝える一助となればと思います。

現在の中野地区


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