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新潟県環境保全型農業直接支援事業に係る田んぼの生き物調査
水田や水路、ため池など、多様な環境がネットワークを形成している農村地域は、生きものにとって重要な生息、生育の場となっています。
この豊かな生態系は、田んぼで米づくりが営まれることによって成り立っており、近年、これらの大切さが認識されています。
国、県、市町村では、「環境保全型農業直接支援対策」の中で「冬期湛水管理」や「江の設置」、「有機農業」等の取組を推進し生物多様性保全を図っています。
生き物調査の基本情報
調査日:平成26年8月13日
調査場所:出雲崎町大字小竹
水田面積:15.5アール
生物多様性保全に係る取組:江の設置
(ここでいう「江」とは、水田の脇に深さ10cm、幅50cm程度の水路を作り生物多様性保全を図るために実施したものです。)
見つけた生き物たち
画像はこのほ場の「江」の状況です
昆虫類
トンボ目
画像なし オニヤンマ (オニヤンマ科) 成虫(目撃のみ)
低山地から産地に広く発生する。幼虫は流水に生息する。
オオシオカラトンボ(トンボ科) 成虫
平地から低山地の池沼や湿地、休耕田、緩やかな流れの溝川に生息する。江の設置による効果が大きい。成虫、幼虫ともに肉食で昆虫等を捕食する。
バッタ目
クサキリ類(キリギリス科) 成虫
イネの葉茎を食害する害虫。雑草地で幼虫が発生し、8月ころに成虫となり水田に飛来する。
カメムシ目
ヒメアメンボ(アメンボ科) 成虫
県内の水田や休耕田で最もよくみられるアメンボ。成虫、幼虫ともに水面を滑るように移動し水面に落ちた虫を捕食する。
コミズムシ類(赤囲い)、他カワニナ、ガムシ類
コミズムシ類の1種(ミズムシ科) 成虫
池沼で普通に見られるが、水田では中干しにより幼虫が死滅してしまう。江の設置効果が大きい。藻類の間や水底の泥に紛れていることが多い。
カスミカメムシ類の1種(おそらくツヤカスミカメ類) (カスミカメムシ科) 成虫
カスミカメムシは類似種が多い。この仲間は植物の葉を吸汁する種が多い。
コウチュウ目
画像無し コガシラミズムシ類の1種 (コガシラミズムシ科) 成虫確認(画像なし)
成虫、幼虫ともに池沼、水田などの流れのない水中に生息する。植物を食するがイネに実害はない。
ガムシ類の1種(ガムシ科) 成虫
池沼や休耕田で普通に生息。幼虫、成虫ともに水中生活。幼虫は肉食で巻貝などを捕食する。成虫は草食で水草を食べる。
ハエ目
ミギワバエ類の1種(ミギワバエ科) 成虫
幼虫は藻類など植物を食害する。
クモ類
ナガコガネグモ(コガネグモ科) 成体(成虫)
水田に普通に見られる。草の間に網を張ってイネの害虫を含むさまざまな昆虫などを捕食する。
アシナガグモ類の1種(アシナガグモ科) 成体(成虫)
イネの株間に大きな巣を水平に張る。害虫のウンカ、ヨコバイ類を中心に捕食する。
軟体動物
カワニナ (カワニナ科)
有機物が多い小河川や水路で見られる。時に水田の中にも生息する。藻類や落ち葉を食べる。
魚類
ドジョウ類の1種(ドジョウ科)
土中の有機物やユスリカ幼虫を食する。中干の影響で水田では減少。江の設置効果大きい。
両生類
トノサマガエル(アカガエル科) 成体
新潟県レッドデータブック絶滅危惧種に指定されている。成体(カエル)になると中~大型の昆虫などを捕食する。江の設置効果大きい。
鳥類
画像なし ツバメ (ツバメ科) 目撃のみ
平野部や里山に飛来する渡り鳥。空中で、飛翔している昆虫を捕食する。
参考文献
農と自然の研究所(2009年)田んぼの生きもの指標