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新潟県ホーム の中の教育・学習の中の中越教育事務所「所長室から」

 中越教育事務所「所長室から」

2010年03月01日

自分で考え、語ること

柔道ノート

 私には大切にしている一冊のノートがあります。表紙に「柔道ノート」とある、中学3年生の柔道部員が書いた自身の練習試合や大会の試合分析です。
 今から20年以上前の話です。私は柔道部の顧問をしていました。練習中に多くのことを生徒に教え、試合では正座して大きな声で檄を飛ばし、一試合ごとに選手を隣に呼んでは試合運びについて助言していました。しかし、それらがどのくらい生徒の心に届き、どう試合運びに生かされていたのか分かっていませんでした。そこで、ある時から方法を変えました。自分の試合を生徒自身がどう思っているか問うたのです。きちっと試合分析ができていれば「その通りです」とほめ、足りないところは補ったり「考えてみなさい」と宿題にしたりしました。さらに、一人一人にノートを預け、試合を振り返らせたのです。
 生徒は、つたなくても自分の言葉で語り、考えながら試合をするようになりました。
 次の文章は、ある大会の団体決勝戦、しかも代表決定戦の試合分析です。

最高の喜び

 内またをかけたが、相手が押したために頭からつっこんで、「警告」を受けてしまった。それは覚悟していたので、ダメージは大きくなかった。
 「1本」をとらなければ勝てないので、相手の大外を返すのを狙っていたが、うまくかからず、また内またをかけて寝技にいった。このとき、ただ相手がわきに手を入れてくることだけを狙っていた。すると案の定、「警告」を取って安心したのか、脇に手をつっこんできたので、気力でころがり逆さげさにいった。30秒間、長いようで短い感じがした。あのときの喜びは、今までに味わったことのない最高の喜びだった。(「柔道ノート」から)

日本サッカー協会の取組

 今、どのスポーツでも「言葉」を重視しています。日本サッカー協会では、トレーニングで「ゲームフリーズ」という指導法を用いています。ゲーム中に修正すべき現象が起こったときにプレーを止め、そこに介入して指導する方法です。「ストップ!」と止めて、「今、どうしてそこにボールを出したの」「なぜ」と問い、「自分はこう思ったから、そこに出した」という言葉を期待します。
 しかし、今から8年くらい前のU-17日本代表は、その問いに答えず黙って一生懸命「答え」を探っていたといいます。彼らは、「問い」には「正解」があり、間違ったことを言ってはならないと恐れていました。
 ピッチに立ったら自分自身で考えてプレーしなくてはなりません。考える際には必ず言葉を用います。日本サッカー協会は、ピッチ上の練習に加えて論理的に思考するための「言語技術」教育に力を注いでいます。

「問い」を大切に

 これからの時代に求められるものは、自分はどのように感じたり考えたりしたか、また、自分はどうしたいのかという意見をもって、それを述べていく力だと思います。
 まずは私自身、自分の考えを自分の言葉で述べ、「あなた(みんな)はどう思う」「どうした方がいいと思う」「どうすればうまくいくと思う」など、自分で考えるように促す「問い」を大切にしていきたいと思っています。

言葉には力がある

 既に申し込みをいただき、もうすぐお手元に届くことと思いますが、本文は「分かる授業 楽しい学校」の巻頭言(一部修正)です。
 「柔道ノート」を書いた生徒の一人が高校の教員となって、柔道部の監督として、1月の県大会で優勝、全国大会に部を率いることとなりました。彼の言葉には夢があり、力があります。「言葉は意識を変え、意識は行動を変え、行動は結果を変える」のです。まさに、彼が求め、歩んできた道です。そんな嬉しいニュースもあって、本文を書きました。
 なお、「分かる授業 楽しい学校」は2部構成となっており、前半は新学習指導要領の趣旨を生かした「授業イメージ」を、後半は学校評価について編集しました。本誌が多くの学校で有効活用され、各学校の教育活動がより一層充実し、子どもたちの学力、体力が高まり豊かな心がはぐくまれることを願っています。 

「分かる授業 楽しい学校」の表紙

中越教育事務所長 佐藤修一