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新潟県ホーム の中の健康・医療・衛生の中の【保環研】 平成20年度に行った経常研究
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【保環研】 平成20年度に行った経常研究

2010年03月02日

平成20年度の経常研究の概要

◆経常研究とは◆
 保健・環境行政の技術的水準の維持向上を図るための研究

◆平成20年度に行った経常研究は下記のとおりです。表題一覧の後に概要を記載しました。◆
   1.保健情報を用いた地域診断支援に関する調査研究
   2.温室効果ガス排出量算定手法に関する調査研究
   3.地理情報システムを利用した環境情報解析システムの整備に関する調査研究
   4.検食からの効果的な食中毒菌検出方法の検討
   5.レジオネラ属菌分離培養方法の検討と遺伝子解析
   6.タミフル耐性インフルエンザウイルスの検出に関する調査研究
   7.加工食品中の残留農薬分析法の検討
   8.溶出試験による医療用後発医薬品の品質評価
   9.腐植物質存在下のダイオキシン類の挙動に関する研究
  10.異常水質事案等の原因物質のスクリーニングに関する検討
  11.低周波音の特性把握に関する調査研究
  12.廃棄物リサイクル推進のための技術的事項に係る基礎的調査研究
  13.地下水中のヒ素と帯水層の地質等に関する調査研究 

1.保健情報を用いた地域診断支援に関する調査研究 【情報調査科】

インフルエンザGIS表示の画像

 本研究では,地理情報システム(GIS)を用い,種々の保健医療に関する情報を表示・解析するために必要なデータを収集・整備するとともに,地域特性把握へのGISの有効性について検討している.
 平成20年度は,GISフリーソフトを用いて,保健所管内図に感染症発生情報を表示させることにより,インフルエンザをはじめとした感染症の発生状況を地理的に視覚化することを試みた.その結果、GISフリーソフトが感染症情報の解析や発信,さらにはデータ流通に有効であることがわかった.

インフルエンザGIS表示

2.温室効果ガス排出量算定手法に関する調査研究 【情報調査科】

温室効果ガス発生量増加のイラスト

 地球温暖化対策推進法では,都道府県は温室効果ガスの排出量を抑制するための実行計画を定めるものとされている.実行計画の策定からその実施・評価にあたっては,県内で排出されている温室効果ガスの排出量を算定し,その動向を把握することが求められる.
 国は「地球温暖化対策推進計画策定ガイドライン」(平成5年・15年改訂・19年改訂)により算定方法の考え方を示しているが,各県で利用できる統計情報データはまちまちであり,具体的な算定作業を行うためには各県の実情にあった算定の実施手順書(新潟県版温室効果ガス算定実施手順書)を整備し,組織として誰でも理解し,算定作業ができるような体制を整備する必要がある.
 そこで平成19年度は,新潟県の温室効果ガス排出量算定に必要な統計情報(図書,インターネット上にある統計情報など)の所在等を調査して排出量の算定を行い,平成20年度は,地球温暖化対策担当者ガイドブック,温室効果ガス排出量算定手引書を作成した.

温室効果ガス発生量の増加

3.地理情報システムを利用した環境情報解析システムの整備に関する調査研究 【情報調査科】

燕市地下水汚染GIS表示

 地理情報システム(GIS)は,環境情報の解析分野においても有効性が高いとされ利用が進みつつある.
 本研究では,環境行政の担当者が県内における環境や公害に関する地理情報を把握し,行政課題の解決に役立てるため,地理情報システムを用いた環境情報解析システムを整備することを目的としている.
 平成20年度は,GISを用いた具体的な解析事例として燕市南町地区地下水汚染について解析を行い,有効性の実証を行った.また,GISフリーソフトを用いた解析及びデータ流通・共有への活用を検討した.

燕市地下水汚染GIS表示

4.検食からの効果的な食中毒菌検出方法の検討 【細菌科】

 食中毒の原因調査に備えて,大規模調理施設においては,原材料と調理済み食品を冷凍保存する検食制度が義務づけられているが,検食から原因菌が検出される食中毒事例は少ない.食中毒原因菌が冷凍保存によって損傷を受け,菌数が減少することが,原因菌の検出を困難にしている可能性がある.
 食中毒菌のなかでも,カンピロバクター,腸管出血性大腸菌は発症菌数が少ないことが知られており,これらを起因とする食中毒では原因食品中の菌数は少なく,検出が困難な場合があると想定される.そこで,両菌種を対象とし,検食を想定した食品からの効果的な検出方法の検討を行った.平成20年度はカンピロバクターについて,凍結保存による経時的菌数変動を調べ,凍結融解後の検体を用いて,増菌培地,培養容器,培養温度別の検出率を比較した.また,検体の遠心処理や,増菌液の遠心集菌について,原因菌検出に対する効果を検討した.

5.レジオネラ属菌分離培養方法の検討と遺伝子解析 【細菌科】

 レジオネラ症の確定診断に用いる主な検査法として,レジオネラ属菌分離法と尿中抗原検出法があるが,菌分離法による都道府県知事等への届出の割合は年々減少している.また,感染源については集団発生例以外では特定される例は少なく,また一般的に感染源として知られている入浴施設を利用していない例も見られる.しかし,感染源を特定するためにはレジオネラ属菌を分離して遺伝子解析を行うことが必須である.
 レジオネラ属菌は土壌細菌として自然界に分布し,アメーバなどに寄生していることが知られているが,現行の検査法では腐葉土や土壌からレジオネラ属菌を分離できないことが多い.平成20年度は,レジオネラ属菌をアメーバに捕食させ培養する方法について,腐葉土や土壌からの検出率を現行法と比較し,また,培養条件等について検討した.

6.タミフル耐性インフルエンザウイルスの検出に関する調査研究 【ウイルス科】

タミフル耐性マーカーH275Yの写真

 現在,国内流行のインフルエンザ治療にはオセルタミビル製剤(商品名タミフル,以下「タミフル」とする)が主に使用されているが,2007年11月以降,欧米各国ではタミフル耐性ウイルスがノルウェーの67%を筆頭に20%以上の率で検出されている.一方,わが国では鳥インフルエンザ(H5N1)に対する治療薬としてタミフルの備蓄を進めていた.このような状況が展開されるなかで,早急にタミフル耐性検査を可能にし,県内でのタミフル耐性株の動向を探り,インフルエンザ防疫対策に必要なデータを蓄積する必要性があり,本研究を開始した.
 現在,報告されているアミノ酸遺伝子変異は,Aソ連型ではノイラミニダーゼ遺伝子中の275番目のアミノ酸がヒスチジンからチロシンに入れ替わったものである.現在流行しているインフルエンザウイルス株を対象に,タミフル耐性遺伝子をもつインフルエンザ株がどのくらいの割合で検出されるか調査する.
 2007-2008シーズンに分離された41件について検査を行った結果,全てタミフル感受性(耐性株出現率:0%)であった.2008-2009シーズンに分離された26件について検査を行った結果は,全てタミフル耐性(100%)であった.全国的にタミフル耐性ウイルスが広がっており,新潟県も同様の結果となった.
 平成21年度はA香港型など他の型についても調査を行う予定である.

タミフル耐性マーカーH275Y

7.加工食品中の残留農薬分析法の検討 【生活衛生科】

食品抽出液を濃縮している写真

 中国産冷凍ギョウザによる有機リン系農薬中毒事件を契機に,加工食品中の残留農薬の調査が必要となったことから,試験方法の検討を行った.
 有機リン系農薬42種,カルバメート系農薬7種を対象に,冷凍ギョウザ及びレトルトカレーを用いて添加回収試験を行い,試験方法を検討した.その結果,GC/MSでは試料マトリックスの影響に留意する必要があるが,LC/MS/MSを併用することで,有機リン系農薬38種,カルバメート系農薬6種について概ね良好に試験することが可能と考えられた.

食品抽出液を濃縮しているところ

8.溶出試験による医療用後発医薬品の品質評価 【生活衛生科】

溶出試験の写真

 塩酸アゼラスチン1mg錠及び塩酸チクロピジン1mg錠について調査。調査は日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、後発医薬品ガイドラインに基づき、溶出性及び溶出挙動性を評価項目として実施した。
 その結果、先発医薬品と溶出性に差異を認める後発医薬品は確認されなかった。また、溶出挙動性については塩酸アゼラスチン1mg錠で10品目中2品目、塩酸チクロピジン100mg錠で14品目中3品目が溶出挙動性は先発医薬品と異なると評価されたが、いずれの製剤も速放性であり医薬品の有用性に差異を認めるものではないものと考えられた。

溶出試験

9.腐植物質存在下のダイオキシン類の挙動に関する研究 【大気科学科】

 水試料中のダイオキシン類の測定方法はJIS K 0132に規定されており,固相抽出法及び液-液抽出方法が採用されている.環境水を測定する場合,当所では処理に供する水量が24Lと多いことから,使用する有機溶媒量が少なくかつ迅速な固相抽出法を採用している.
 この固相抽出法において工場排水のダイオキシン類の一部が固相に吸着されない事例があった.また,比較的清浄と考えられる地下水においても同様の事例が報告されている.この原因の一つとして,試料に含まれる腐植物質の影響によりダイオキシン類が固相に吸着されず通過することが考えられる.
 そこで,本研究では腐植物質存在下におけるダイオキシン類の挙動を調べ,抽出に固相を使用する際の条件を検討することを目的とした.
 平成20年度は,水溶液中のダイオキシン類の一部が,市販の腐植物質が存在するアルカリ性溶液において,固相を通過することを確認した.

10.異常水質事案等の原因物質のスクリーニングに関する検討 【水質科学科】

 本研究は,異常水質等の原因物質となることの多い油類や農薬などを対象として,スクリーニングに関する検討を行い,緊急時における迅速対応に資することを目的としている.
 平成20年度は,少量(数ml)の試料水で分析でき,かつ分析時間の短縮が可能であるシリンジニードル一体型固相カートリッジ(MEPS)を用いた農薬類の一斉スクリーニング法を検討した.GC/MSでの分析が可能な70種の農薬類について添加回収実験を行った結果,一部の農薬で回収率が低かったものの概ね50%以上の回収率が得られ,緊急時のスクリーニングには十分適用できると考えられた.
 また,今回検討した農薬類のスクリーニング法の他,これまで本研究で検討した油類の識別法,及び農薬の毒性と分析結果の評価について,環境センター担当者を対象とした研修会を開催した.

11.低周波音の特性把握に関する調査研究 【環境科学科】

低周波音の測定の写真

 低周波音は,発生状況が個々のケースにより異なり,人間への影響に関する個人差が大きく,更に対策も難しい場合が多い. 
 このため,発生源となり得る機械や構造物から発生する低周波音について,できる限り多くのデータを収集・解析及び蓄積することにより,その発生要因及び周波数特性等を把握し,低周波音問題の解決に資することとした.
 平成20年度は,ヘリコプター及び国道116号線新潟西バイパスについて測定を行った.

低周波音の測定

12.廃棄物リサイクル推進のための技術的事項に係る基礎的調査研究 【環境科学科】

 廃棄物のリサイクルに関する情報は,非常に多様であり,かつ多業種にわたるなどのため,統一されて整理されているものがなく,情報の収集が困難な状況にある.
 そこで,新潟県における廃棄物の発生状況やリサイクル状況などをデータベース化し,廃棄物に関する情報の入手をより容易となるシステムを検討した.
 その結果,廃棄物の減量化等に向けた施策においては,産業廃棄物では汚泥を,未利用バイオマスでは稲わらや下水汚泥などの有効利用が必要であることがわかった。

13.地下水中のヒ素と帯水層の地質等に関する調査研究 【環境科学科】

地下水を採水している写真

 ヒ素は,地下水の水質監視調査において,環境基準を超過する割合が高い有害物質である.本県は,全国的にみても,ヒ素による地下水汚染が多く,その原因は,ほとんどが自然由来と考えられている.
 本研究では,帯水層の地質や地層とヒ素濃度の関係を調査し,また,温泉、鉱山等の情報も付加することにより,県内の地下水中のヒ素の分布状況を明らかにする.
 平成20年度は,既存の地下水調査の資料を収集整理し,GISにより地図化したところ,地下水環境基準を超過するヒ素は,信濃川下流の沖積平野等に多く分布していた.

地下水を採水しているところ