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東京電力柏崎刈羽原子力発電所の稼働に関する新潟県民投票条例案に対する意見

2013年01月16日
 直接請求に係る条例案(以下「条例案」という。)は、東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所の稼働の是非に関し、県民の意思を明らかにするため、県民による投票を行い、知事及び県議会はその結果を尊重し、県民の意思が忠実に反映されるよう努めなければならないというものである。
 重要事項について、住民投票という直接民主的手法で補完していくことは、民主主義のあり方として選択肢の一つであると考える。
 しかしながら、原子力発電所の稼働について議論を行うに際しては、稼働させること、又は、稼働させないことに伴い、立地自治体ゆえに生じる様々な課題や不利益について十分な情報が提供され、県民一人ひとりが理解した上で議論を進める必要がある。
 このような点も含め、条例案には、以下のような視点から、検討すべき問題があると考える。

1 稼働の議論を行うには検証を踏まえた情報提供が不可欠であること
 原子力発電所は、停止していても事故が起こる可能性がある。本来、まず行わなければならないのは、原子力発電所の安全確保である。そのためには、福島第一原子力発電所事故の検証が不可欠である。
 福島第一原子力発電所事故の検証については、現在、県においては、安全管理に関する技術委員会において、進められているところである。稼働の可否についての議論は、メルトダウンの発表等の情報伝達の遅れや隠蔽に関する責任の所在、テロ等によってプラントの重要部分が失われることを想定したB.5.bのような対策を求めなかったことに関する責任の所在、海水注入は誰が判断すべきだったのか、労働法制上、高線量下での作業を命じることができるのかなど、マネジメントや法制度の検討を含む検証の結果を受け、安全性が確保されなければ行うことができない。
 条例案第5条第1項は、県民投票の期日について、この条例の施行日から90日を超えない範囲において知事が定める旨を規定する。しかし、現在、検証が進められていることを踏まえると、90日の範囲内では、検証の結果やそれを踏まえた安全対策など、稼働の是非について県民が考えるための十分な情報を提供することができない。

2 国の責任で地域振興策が構築されることが必要であること
 現在、柏崎刈羽原子力発電所が停止しているのは、東京電力が事故を起こし、新たな安全基準をまだ国が策定しておらず、国の責任で停止させているためである。
 また、仮に国が安全基準を策定したとしても、柏崎刈羽原子力発電所の安全性に疑問があれば、安全協定に基づく措置要求を行うことも想定される。
このような事情による原子力発電所の停止により立地地域が受ける影響に対しては、国や東京電力が責任をもって対応すべきものであり、国の責任において、地域振興に係る政策体系が、構築されなければならない。
 しかし、仮に適切な原子力安全確保体系が構築され、制度上は稼働が可能である場合に、住民投票の結果を踏まえて原子力発電所を稼働させないこととすれば、国の原子力規制の制度等とは無関係に、事後法的に、地元住民の意向や判断に基づき原子力発電所を稼働させないことになる。
 このような場合には、東京電力を含め、原子力発電所に投資を行ってきた者や原子力発電関連産業等による利益を期待してきた者に対する賠償の責任を誰が負うのかという問題が生じるが、事後法的に停止させた者が責任を負うべきであるということにもなりかねない。
 いずれにしても、原子力発電所の稼働の是非を問うためには、停止した場合の地域振興策や賠償の考え方が国から示され、県民に十分に周知されることが必要であると考える。
 また逆に、安全性の確認がなされない中で、住民投票の結果を踏まえて原子力発電所を稼働させることとすれば、立地地域が安全上のリスクを負うことになりかねず、投票結果を尊重すべきなのかという問題が生じる。

3 投票の実施前に原子力についての体系的な施策が構築されるべきであること
 日本の原子力政策は、使用済核燃料を再処理する核燃料サイクルを基本として進められてきた。
 原子力発電所を稼働させないということは、核燃料サイクルという基本政策を放棄するということになる。核燃料サイクルが放棄されると、使用済核燃料が利用することのできない廃棄物に変わるという現実がある。この場合、これまで本県から搬出され、青森県六ヶ所村に保管されている使用済核燃料が柏崎刈羽原子力発電所を保有している東京電力に戻される可能性があり、また、その後の処理も地元が担うことにもなりかねない。
 使用済核燃料は、放射線量が高く、プルトニウムを含むことから核物質防護上からも厳重な管理の下で保管しなければならない危険なものである。また、冷温停止中であった福島第一原子力発電所4号機が爆発を起こしたことを踏まえると、そのような危険性を伴う可能性もある。
 結果的に、危険な使用済核燃料を保管するリスクを、子々孫々に渡り、県民が負うことになる可能性もある。
 また、日本は、核兵器不拡散条約を批准し、国際原子力機関の査察等の保障措置を受諾した上で、原子力を平和利用することとしている。また、日本は、日米原子力協定に基づいて、アメリカの同意の下で、使用済燃料の再処理を行ってきている。日本が原子力発電に依存している限り、アメリカは、日本がこれらの核燃料をもとに核武装しないようにコントロールすることができる。
 しかしながら、原子力発電所を稼働させないこととした場合には、核物質等の供給に係る制約がなくなり、核兵器への転用が容易であるプルトニウムを、国として、使用目的もなく保有し続けることになる。これらのことから、日本が核兵器不拡散条約から撤退し、核武装するのではないかという疑念を諸外国から抱かれる可能性が生じるという問題も発生する。
 国として国際社会に対してこれらの問題に対処できる体系的な施策が策定されていない状況であり、原子力発電所の稼働の是非の判断には、これまで日本が積み上げてきた国際社会との関係も考慮する必要がある。結果的に、県民投票は、このような国や国際社会に係る問題を、一立地地域の住民に問うことになる。
 原子力発電所の稼働の是非について県民が判断するためには、原子力発電所そのものの知識のほか、このような県民にとって不利益が生じる問題についての情報が必要である。県民に対してこれらの情報が周知がされた上で、議論される必要があると考える。

4 二者択一では民意を適切に反映できないこと
 条例案第15条は、投票の方式として、投票用紙の賛成欄又は反対欄に○の記号を記載することとし、二者択一で県民の意思を表明することとしている。
 しかし、原子力発電所を稼働させるのか、稼働させないのかという問題は、上述の項目2のように、安全性の議論とは別に、住民投票の結果を踏まえて稼働させないという結果になった場合には、その影響や賠償に対して、立地地域の住民だけでなく、全県民が負担するリスクを伴うものとなる。また、上述の項目3のように、使用済核燃料を長期間にわたって保管しなければならなくなるというリスクを負う可能性の問題や、国際的な安全保障上の問題、日本が核武装するのではないかという疑惑の問題を伴うものである。
 このような事情が存在するため、県民には、原子力発電所の稼働の是非の判断については、自治体や専門家の判断に委ねたいとする意見や、住民代表である議会において十分に審議しなければ適切な判断が下せないという意見もある。
 加えて、県民の中には、放射能そのものに対する不安を訴える声がある。
 単純に、稼働の「賛成」又は「反対」という選択肢では、県民の多様な意見が反映できないという懸念がある。

5 県条例で市町村に県の事務を義務付けることは地方自治法の趣旨に反すること
 市町村と県は、対等な立場で協力する関係にあることが基本である。
 市町村の意思を斟酌することなく、県が条例を制定し、一方的に事務の執行を義務付けることは、地方自治法の趣旨に反するものである。
 これら基本的な考え方を踏まえ、県の事務を市町村が執行するため、地方自治法には2つの制度が設けられている。
 一つは、行政運営を合理的・効率的に執行するという考えに基づく「事務の委託」である。
 いま一つは、住民に身近な行政は、できる限り住民に身近な市町村に委ね、住民生活の利便性を高めていくという考えに基づく「条例による事務処理の特例」である。
 前者においては、対象となる「市町村議会の議決」が、後者においては、同じく対象となる「市町村長への協議」が必要とされており、現行自治制度において、市町村による事務の執行は、市町村の理解・協力なしには行い得ないものとなっている。
 しかるに条例案では、第9条第1項で、市町村の理解・協力を得るためのプロセスを設けることなく、「市町村の選挙管理員会は投票資格者名簿を調製しなければならない」と規定していることは、地方自治法の趣旨に反するものであり、実施することは困難である。

6 その他執行上の問題
 これらのほか、条例案第20条から第22条までは、県議会に県民投票広報協議会を置き、県民投票広報協議会は県民投票の広報に関し必要な事務を行う旨を規定する。しかし、議事機関である県議会は県の事務を直接執行することが想定されていない中で、このような規定を設けても、実施することは困難である。
 また、条例案第7条第1項は、県内の市町村に住所を有し、年齢満18年以上の日本国籍を有する者や永住外国人を投票資格者として定めている。このことは、年齢満20年以上の日本国籍を有する者に選挙権や国民投票権を認める現在の法制とは異なる取扱いとなり、投票資格者名簿の調製等に多くの労力と多額な経費を要するなど、実務上の課題が大きく、実施には困難を伴う。

7 以上の課題に対する考え方
 県民投票を実施するに際しての以上のような課題に対しては、次のような視点からの対応が必要であると考える。
(1) 上述の項目1及び3の、県民投票の期日や情報提供については、投票の期日に制限を設けないことや、県民が稼働の是非について考えるための十分な情報を知事が提供することの義務付け
(2) 上述の項目2の、立地地域の影響や賠償責任への対応については、地元住民が負担することになりかねない場合に、例えば、県が他の施策・地域に優先して立地地域を支援できる規定、又は増税した上で立地地域の支援策や賠償責任に対応できる規定の追加
 また、稼働に賛成の結果となった場合でも、安全性が確認されるまで、投票結果を尊重する旨の規定が効力を持たないとする規定の追加
(3) 上述の項目4の、県民が多様な意見を持っていることについては、その意見が適切に反映されるよう、選択肢を工夫し、追加すること
(4) 上述の項目5の、市町村による事務の執行については、全市町村の理解・協力を得るための手続の追加
(5) 上述の項目6の、投票資格者名簿の調製については、現在の法制と同様の取扱いとする方法の採用

 県民投票を実施するためには、条例案には以上のような課題があり、提案されている条例案を修正する必要がある。
 一方で、地域の安全・安心をいかに確保するか、未来の地域社会をどのように構築していくのか等、身近に生じ、その選択が子々孫々まで長期に影響を及ぼす重要課題については、間接民主制を直接民主制的な制度で補完することが望ましい。
 この度の条例制定請求は主権者たる住民が法定数を大幅に超える多数で意見表明の機会を求めて請求したものであり、その意義は重く受け止めるべきである。
 以上を踏まえれば、本意見の中で示した検討項目を考慮しつつ、慎重審議の上、本請求の趣旨を忖度した結論を得ることを期待する。

本件についてのお問い合わせ先
 原子力安全対策課長 須貝
(直通)025-282-1690 (内線) 6450

市町村課長 川上
(直通)025-280-5054 (内線) 2220


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