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平成28年度「新潟県建設業新分野進出優良事業表彰式」を開催し、株式会社小野組、株式会社渋谷建設が表彰されました。
県では、建設業から新分野に進出し、他の模範となる優れた成果を収めている事業を広く情報発信することにより、企業の新分野への進出意欲を喚起し、本県地域経済の活性化及び雇用の維持・安定を図るため、平成25年度に「新潟県建設業新分野進出優良事業表彰」を創設しました。
今年度の表彰式を平成29年1月16日(月曜日)に県庁で開催しましたので、表彰式の様子と受賞事業を紹介します。
(前列):左(株)小野組 小野代表取締役社長、中央 美寺県土木部長、右 (株)渋谷建設 渋谷代表取締役 (後列)左 (株)小野組 小野次長、右 (株)渋谷建設 渋谷専務取締役
事業の選定について
応募のあった事業について、有識者で構成する選定委員会において、「(1)雇用の創出効果」「(2)経営資源の活用状況」「(3)新規性又は独創性」「(4)継続性又は将来性」「(5)地域貢献性」の5つの着眼点により厳正なる審査をした結果、次の事業が表彰対象として選定されました。
受賞事業の紹介 株式会社小野組(胎内市)「閉鎖型植物工場におけるイチゴ栽培」
本事業は地域の遊休施設を有効活用したいという思いから、旧小学校校舎を活用して、平成25年に開始しました。
LEDを使用した完全閉鎖型工場で、一年中「いつでも・どこでも・だれでも」生産できる栽培システムを確立しました。収穫されるブランドいちご「越後姫」を宙吊りパッケージでインターネットや催事で販売するなど、その味・見た目共に多くの注目を集めています。
今後は、確立された栽培システムを販売していき、「苗の仕込みを地方で行い、収穫を都市で行う」という、新たな流通システムの開拓にも取り組んでいく予定です。
宙吊りパッケージで販売する、いちご「越後姫」
いちご収穫の様子
- 株式会社小野組のホームページ<外部リンク>
- 受賞事業のホームページ<外部リンク>
有識者による選定委員の講評は次のとおりです。
雇用の創出
地元の方を5名新規に雇用している。
経営資源の有効活用
建設業で培ったネットワークを活用している。
新規性・独創性
- 一季成りイチゴを一年中収穫するという世界初の取組である。
- 気候・動物被害の影響を受けない室内で栽培されている。
- 既存の建物を利用した栽培以外に、ドームハウスや簡易クリーンルームを活用したパッケージの開発も検討してもらいたい。
継続性・将来性
- イチゴの通年栽培型ユニットの全国販売により、ジューシーで甘みが強いが果肉が柔らかいために輸送に弱いという、新潟ブランドイチゴ「越後姫」の弱点を克服し全国に発信することができる。
- ビジネスモデルについては、技術連携、市場設定において未だ迷いが見受けられるが、「様々な産業を新しく結合させながら事業を進めていくという『イノベーション(新機軸・革新)に対する理解』」、「システム開発から小売りまでの全てを賄うことに必ずしも固執していない『全てを抱えないというオープン性』」がブレなければ、ビジネスプロセスの中で適宜修正が図られ、事業の安定化・確たる方向性が定められるものと思料する。
- 安全・安心な高級イチゴは将来性が大きい。
- 収支モデルを顧客に合わせて(面積制限等)シミュレーションできるシステムも必要と思われる。
- 工場生産システムにおいて、生産性向上(省力化)を考慮したノウハウの提供も検討して欲しい。
地域貢献性
- 少子化の影響で発生している中山間地の廃校の植物工場への転換は地域貢献性が高い。
- 自社を問題解決企業と位置付け、地域や社会での役割を内省し、新分野事業への展開へと結びつけた。この姿勢は他律的になりがちな建設業界において範となるものである。
受賞事業の紹介 株式会社渋谷建設(糸魚川市)「わさび栽培プラントシステムによるわさびの栽培」
本事業は、地域資源である豊富な地下水に着目し、平成17年にビニールハウスでのわさび栽培として開始し、平成19年には直売所を開設しました。
わさび苗に直接、水を掛け続けることにより、ビニールハウス栽培の課題である夏季の水温上昇を防ぐことに成功し、大量のわさびを生産できる栽培プラントシステムを確立しました。収穫されるわさびは主に築地で販売されるなど、その品質・量ともに高い評価を得るとともに、多くの加工品も開発しています。
また、地元の県立海洋高校と共同で魚の養殖にも取り組んでおり、地域資源である水を様々な用途に活用しています。
収穫されたわさび
わさび栽培の様子
受賞事業のホームページ<外部リンク>
有識者による選定委員の講評は次のとおりです。
雇用の創出効果
地元の方を7名新規に雇用している。
経営資源の有効活用
- 地下水を利用した資源活用がされている。
- 小さな思いつきから既存技術とネットワークを活用し、戦略のストーリーを豊かに広げているのは夢のある話であり、県内産業を勇気づけるものである。
新規性・独創性
- わさびで使用した水を再利用して魚の養殖(チョウザメ、イトウ、銀ザケ)を行っている点は新規性、独創性が高い。
- わさび事業の思いつきは珍しくないが、自社技術と直面する課題の結びつけ方、新たに獲得した知見・経験の事業への投入が巧みであり、イノベーティブな思考は他の範となる。
- 農業、漁業とうまく連携して、展開にストーリーがある。
- 商品ブランド化の取組が行われている。
継続性・将来性
- 県立海洋高校と共同で行っている魚の養殖と真昆布うどん等の製品開発は事業の継続の可能性を高める。
- 販売面で県糸魚川農林振興部や県食品・流通課から販売先の開拓支援のアドバイスを得ており将来性も高い。
- わさびプラントの販売実績もあり、特許を活用した今後の展開が注目される。
- ロケーションを活かした観光化、商品・飲食の提供も検討して欲しい。
- 生産能力からみてkgあたりの単価を上げる必要がある。(直接販売の拡大)
- 加工商品の開発及び消費拡大(消費シーンや用途)のための提案の必要がある。
- 海外への積極的展開も検討してほしい。
- 収支面では償却負担が大きく当面は厳しい状況が予想されるが、各改善課題に取り組んでもらいたい。
地域貢献性
- 県立海洋高校と共同で行っている魚の養殖と真昆布うどん等の製品開発は地域貢献性が認められる。
- 養殖事業が軌道に乗れば地域の産品ブランドとして貢献できる可能性がある。