〔1〕法人とは
法人とは、自然人以外のもので権利義務の主体となりうるものをいいます。今日の社会においては、自然人のほかに多種多様な団体が活動しています。これらの団体は、一定の目的のもとに集合して構成される人の集合体や一定の目的のもとに結合された財産の集合体ですが、その活動は、個々の構成員の意思を離れてその団体独自の意思をもって活動し、その団体自身が、社会において、一つの構成分子となり、個人にはない大きな力を発揮し、重要な役割を果たしています。このような団体のうち権利義務の主体たる地位を有することを法律によって認められたものが法人です。
法人は、民法その他の法律の規定によらなければ成立することができないとされています(民法第33条)。現在成立を認められている法人には民法による公益法人、宗教法人法による宗教法人、医療法による医療法人、労働組合法による労働組合など種々のものがあります。
〔2〕公益法人とは
民法の認める公益法人には、社団法人と財団法人の2種類があります。
社団法人は、一定の組織を有する人の集合体であって人の増減変更にかかわりなく一つの団体として存続し、これに対し法人格が認められているものです。その団体の活動は設立の際に作成された団体の根本規則である定款に定める公益目的及び運営方法に従って行われ、団体の意思は社員により構成される社員総会によって決定されるものです。
社団法人は、一度成立した後においても最高意思決定機関である社員総会においてその根本規則である定款を変更し、その事業や組織を変更して存続することができますから、変遷する社会情勢に対応して公益目的を遂行していくのに適しているといえます。
財団法人は、一定の目的にささげられた財産の集合体とこれを運営する組織を有するもので、社団法人のような社員というようなものはなく、その財産そのものに法人格が認められています。その団体の活動は、財産を出えんした者の作成した団体の根本規則である寄付行為に定める目的及び運営方法に従って行われます。
財団法人は、財産を出えんした者の定めた公益目的を達成するために活動するもので、社団のように社員の総意によってその意思を決定して活動するというようなことがないので、変遷する社会情勢に応じてその事業や組織を変更していくことができず、あらかじめ設立者の意思によって与えられた公益目的と組織のもとに恒常的に事業を行っていくものです。
〔3〕公益法人の設立
法人格を認める法律の態度には、弁護士法による弁護士会のように法人の設立を強制するもの、商法による会社のように法律の定める一定の要件を備えることによって成立するもの、宗教法人法による宗教法人のように法律の定める一定の要件を備え主務官庁に申請すれば、その要件を具備している限りその設立を認可されるもの等種々の形態がありますが、民法の認める公益法人は、法人格を与えるかどうかを主務官庁の判断にまかせ、主務官庁が適当と判断した場合にその設立が認可されます。(民法第34条)。
主務官庁とは国の行政機関をさしますが、この主務官庁は、政府の行政組織の上では中央官庁、つまり内閣総理大臣、各省大臣がこれに当たるものとされており、その法人の業務の内容がいずれの府省に属するかに応じてその府省の大臣の許可を受けるべきものとされています。なお、この公益法人の許可の権限は、民法及び公益法人に係る主務官庁の権限の委任に関する政令(平成4年政令第161号)により都道府県知事等に一部委譲されております。
主務官庁は、公益法人の設立を許可するに当たって、次のような点からその設立を許可するかどうかを判断します。
(1)公益を目的とするものであること。
公益とは公の利益、いいかえれば社会における不特定かつ多数の人々の利益をいいます。民法では公益として、祭祀、宗教、慈善、学術、技芸を例示として掲げています。(民法第34条)今日ではこれらを目的とする多くのものは、宗教法人法、私立学校法、社会福祉事業法等により法人となることとされており、民法に例示するものはほとんど他の法律により法人格が与えられることとなりますが、この例示に当たらないものでも不特定多数の利益を目的とするもの、いいかえれば、法人の活動により利益を受ける者が、社会全体の人々に及ぶようなものは公益となります。
このような公益の観念からして、次のようなものは、公益を目的とするものとはいえず、公益法人として適当ではありません。
ア 同窓会、同好会等構成員相互の親睦、連絡、意見交換等を主たる目的とするもの
イ 特定団体の構成員又は特定職域の者のみを対象とする福利厚生、相互救済等を主たる目的とするもの
ウ 後援会等特定個人の精神的又は経済的支援を目的とするもの
これらのうちアとイについては、これを従たる目的とする場合においては、主たる目的が公益を目的としているならば、設立を許可することもありますが、ウについてはたとえこれを従たる目的とするものであっても許可をすることはありません。
また、公益目的を達成するための手段として行う公益法人の事業は、設立の趣旨、目的からみて相応なものであり、かつ、十分な内容を持ったものでなければなりません。
たとえ事業そのものに公益性が認められるものであっても、社会通念上営利企業として実施するのが適当と認められる性格又は内容のものは、公益法人の事業としてふさわしくありません。
これら公益に該当しない事業を目的とするものは、民法上の公益法人とはなりえません。
(2)営利を目的とするものであってはならないこと。
営利とは、専ら構成員の利益を目的とし、その団体の得た利益を何らかのかたちで構成員に分配することをいい、このような営利を行うことは、公益法人には許されません。まして営利を行うことを目的とするような団体は公益法人としては認められないことになります。
しかし、目的とする公益事業を行うための経費に充てる収入を得るために、収益事業を行うこと(例えば音楽会や展覧会を開き収益をあげる場合)は、ある程度やむを得ないこととされています。このような収益事業は、無制限に認められるものではなく公益法人としての性質上そこには限度があります。
収益事業は、法人本来の公益目的を実現するための手段として、公益事業に付随して行うことが認められますが、この場合においても、その収益事業の規模が本来の公益事業に比べて大きくないこと、その収益事業の実施により本来の公益事業に支障を及ぼすおそれのないこと、その収益事業の内容が社会的信用を損なうようなものでないことが必要であるとされています。
(3)確固として財政的基盤と組織とを有していること。
公益法人は、既に述べたように、人又は財産の集合体に対し法人格を認め、それが公益を実現するために活動し、社会一般の人々の利益のために事業を行うもので、その活動は広く社会の人々に影響するものであることからそれだけの社会的責任もあり、設立された後のその目的を達成するまで永続してその活動を行えなければなりません。将来の運営が困難な状況に陥り、ひいてはその活動が停止したり、事業実施が低調となったり、収益事業に偏りすぎてしまうおそれがないよう確固とした財政的基盤と組織を有するものでなければ設立は許可されないことになります。
公益法人の運営に要する費用は、社団法人にあってはその社員の納める会費、財団法人にあっては設立当初の寄付財産から生ずる果実によってまかなうことが原則ですが、恒常的な賛助金、財産の運用収入等毎年安定して得られる収入がある場合は、これを含めた資金全体で事業活動ができるものと考えられます。更に法人の健全な運営のためには、公益法人の財産は価値が不安定であり、また、諸種の負担が付せられている結果実質的に価値がないような財産は、資産の構成としては好ましくないので極力排除されなければなりません。
また、公益法人の組織は、その法人の健全かつ継続的な管理運営を可能にするようなものでなければなりません。理事の数や理事及び監事の任期が法人の実態からみて相当であり、理事会、総会等の適正な運営を図るため、会議の成立要件及び議決要件が明確に定められており、かつ、理事等の構成員の相当部分が同一親族、特定企業関係者、所管官庁出身者又は同一業界関係者で占められていないことが必要です。
〔4〕公益法人の監督
公益法人は、公益を目的とするものが、公益の美名に隠れて不当なことをする等その業務の状況のいかんによっては、公共の利害に関係することが大きいものであります。公益法人にはその業務を監督する機関として監事を置くこととされていますが、監事は法律上は必置機関ではなく、また、置かれている場合であっても理事と監事との対人関係が親密であるなど監督機能を十分に果たすことができない場合もあります。
このようなことから公益法人が行う業務については、主務官庁が監督に当たることになっており(民法第67条第1項)、その具体的な内容は、次のようなものです。
公益法人は、主務官庁に対し、毎事業年度開始前に事業計画及びこれに伴う収支予算を届け出なければならず、事業年度終了後3月以内にその年度の事業の状況、収支決算、年度末現在の財産目録、財産の増減及びその理由並びに社団法人にあってはその社員の異動状況を報告しなければなりません。更に事務所、資産の総額、理事の氏名、住所等登記事項の変更及び監事の変更のあった場合にはその都度届け出なければなりません(知事の所管に属する公益法人の設立及び監督に関する規則(昭和41年新潟県規則第11号。以下「規則」という。)第4条、第5条、第6条、第7条及び第8条)。
また、主務官庁は法人に対しいつでも職権をもって法人の業務及び財産の状況を検査することや監督上必要な命令をすることができます(民法第67条第2項及び第3項)。
そのほか、社団法人の定款の変更は、主務官庁の認可を受けなければその効力は生じないものであり(民法第38条第2項)、財団法人についても事実上同様な取扱いがなされております。また、法人が目的以外の事業をしたり、設立の許可の際に付せられた条件に違反したり、主務官庁の監督上必要な命令に従わない場合において、他の方法によっては監督の目的を達成することができないとき、正当な事由がないのに引き続き3年以上事業を行わないときその他公益を害するような行為をしたときは、設立許可の取消しをされることがあります(民法第71条)。
公益法人の解散
公益法人は一定の事由により解散し、消滅します。法人は解散するとその本来の活動を停止し、既存の法律関係を整理し、残余財産の処理の手続に入りますが、このような状態になることを解散といいます。
公益法人は、次の事由が生じたときに解散します(民法第68条)。
(1)定款又は寄付行為に定められた解散事由の発生
(2)法人の目的たる事業の成功又はその成功の不能
公益法人は、あらかじめ定められた公益目的を達成するために活動を行うものですが、その目的が達成されればそれ以上その法人が存続する必要はなくなりますし、またその目的の達成が客観的に不可能な状態となれば、その法人が存続する意味もなくなり解散します。
(3)破産
公益法人は、民法第70条の破産の宣告を受けた場合に解散をします。法人の破産の宣告は、その法人の財産をもってその法人の債務を完済することができない状態すなわち債務超過となったときになされます。理事は、このような状態となった場合には直ちに裁判所に対し、破産の宣告を請求しなければならず、これを怠ると過料に処せられます。また、その法人の債権者も裁判所にその法人の破産の宣告を請求できますし、裁判所は職権をもって破産の宣告をすることができます。
(4)設立許可の取消し
公益法人がその目的以外の事業を行ったり、許可の条件に違反したり、主務官庁の監督上必要な命令に従わない場合その他公益を害するような行為をしたような場合において他の方法によっては監督の目的を達成することができないとき又は正当な事由がないのに引き続き3年以上事業を行わないときには、主務官庁は、その設立の許可を取り消し、法人を解散させることができます。(民法第71条)。
(5)社員総会の決議
社員総会は、社団法人における最高の意思決定機関でありますが、この社員総会において解散を決議することにより社団法人は解散することができます。解散の決議は、法人の消滅に関する重大なことがらですから、定款に別段の定めのない限り総社員の4分の3以上の承諾を必要とすることとされています。(民法第69条)。
(6)社員の欠亡
社団法人は、人の結合をその基礎としているものですから、その社員が退会したり、死亡したりして1人もいなくなってしまうと、その活動を行うことはできず、解散せざるを得ないことになります。
以上述べたような事由が生じた場合には、法人は解散し、その活動を停止して既存の法律関係や財産関係の整理すなわち清算を行うことになります。このような解散した法人は、清算の目的の範囲内においてその清算が終わるまでは、存続するものとされています。(民法第73条)。
清算の結果残余財産がある場合に、法人は自然人と異なり相続ということがありませんから、その財産をどう処分するかが問題となります。民法ではその処分の方法を次のように定めています。(民法第72条)。
(1)解散した法人の定款又は寄付行為で帰属権利者が指定されている場合にはその者に帰属します。
民法では単に「指定シタル人」に帰属すると規定していますから、そこに制限はないように解されますが、社団法人の場合において特定の社員、財団法人の場合において寄付者を指定することは、公益法人の性格上許されません。
(2)定款又は寄付行為で帰属権利者を指定する方法を定めている場合には、その定められた方法によって帰属権利者が決定されます。なお、公益法人を設立する場合に作成される定款又は寄付行為には残余財産の帰属権利者を指定する方法として、総会又は理事会の議決を経た上で、主務官庁の許可を得て類似の目的を持つ他の団体に寄付することをあらかじめ規定しておくのが通例となっています。
(3)定款又は寄付行為に残余財産の処分について何ら規定のない場合には、理事は総会又は理事会の議決を経て主務官庁の許可を得て、その法人の目的に類似した法人にその財産を帰属させることになります。
(4)以上の方法によっても処分されない財産がある場合には、その財産は国庫に帰属することになります。
公益法人の財産は、公益目的を達成するために、社会の人々が寄付したものであります。したがって、清算の結果生じた残余財産の処分は、その財産を寄付した人々の意思を尊重し、公益目的に沿ってなされなければならず、これを営利法人のように社員に配分したり、あるいは、寄付をした者に返すようなことはできません。